木漏れ陽の中に
のんびり木陰で読書ができればそれだけで幸せです
ふりだし
「もう、やめて!」
智美が悲鳴に近い声で叫んだ。
俺の別れ話は、智美のその声で遮られてしまった。
しかし、俺は二人の関係が既に冷えていると感じている。もちろん、智美もそうであっただろうし、修復できないと、うすうすは感じていたはずだ。
俺は、「さよなら」と一言だけ告げ、智美のマンションを出て行った。

その日の夕方は、2ヵ月ぶりに智美に会い、二人そろってレストランへ出かけ、二人してイタリア料理を黙々と食べて、智美のマンションでも何の会話もなく、テレビドラマを眺めていた。
「もう、わかれよう」と俺から話しを切り出した。
二人の間に、テレビからの軽快なコマーシャルソングが漂っては消えて、タレントの意味のない会話がとてもやかましく感じられた。だが、俺はテレビを消すことにためらった。
なんの音のない静寂が、この場に出来てしまう事を、俺は耐えられなかった。
「誰か好きな人ができたの?」と智美が言った。
「いや、そんなことはない。愛する事に疲れた。お互い愛する事を無理しているようだ。」
その言葉を、智美は遮った。

二日後、智美から会いたいとメールがあり、俺は約束の喫茶店へとむかった。
智美はだいぶ前から、その喫茶店に来ていたようだ。カフェオーレは半分ほど飲みかけて既に冷めてしまっていた。まるで、俺たちの関係に似ているなと俺はふと思った。

「私、あれから考えたの、あなたが言うように、二人とも愛する事に疲れているわ。でもね、私もあなたも、おたがいに、愛して欲しいと言わなかった。いつも、愛してると自分の愛をささやいていたのよ。だから、疲れたの、そう、私、思ったの・・・」
智美の目から涙がこぼれ落ちた。
「そうだな、俺も愛しているかと聞くが、愛して欲しいとは一度も言わなかったな。」
俺は智美のためにと考え、智美も俺のためにと、思い悩んでいた事に気がついた。

「それじゃ、俺を愛してくれるかい! いや、俺を愛して下さい。」
「はい、あなたも、私を愛して」

愛情は与えるだけでは無理があり、愛情をしっかり受け止める事も大切なのだろう。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学



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オリジナル小説を不定期に連載しています。



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