木漏れ陽の中に
のんびり木陰で読書ができればそれだけで幸せです
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FC2Blog Rankingどうせ夢見るなら、総合トップを目指せ! そんなアホに愛の手を
ちぃちゃん遊ぼう(30)
「おかぁちゃん、僕さ、死んじゃって、幽霊になったらしいんだよ」
「ただでさえ、ぬけてんのに、事故で頭の脳みそも、どっかに置いてきたんかい、それより、この人誰、お医者の先生様かい?」
小百合は入り口に立っている並木に、ぺこりと頭を下げながら和之に聞いた。
「この人は並木さんです、俺の担当の天使さん、これからお世話になるんだよ」
小百合は、椅子から立ち上がり、並木に向かい、
「和之をお願いします、この子は頭はちょっとばかし足りないですけど、気の優しい子ですから、これからもお願いします」
といって頭を下げた。
並木もそれに合わせて会釈をした。
その時、コンコンと音がしてから病室のドアが開きかけた。
看護師の杉山智子が開きかけたドアの隙間から顔を覗かせ、
「岩下のおばちゃん、ここは病院なんだからもう少し声を落としてよ、ほかの患者さん達に迷惑になるからさあ」
「ごめん、ごめん、和之が、馬鹿なこと言うもんでね、ちょっとばかし、声が大きくなっちまったよ」
「和ちゃん?、和ちゃんはICUでしょう?」
「智子ちゃんもおかしなこと言って、ほら、そこに和之がいるでしょう」
と小百合は和之の方を向きながら、顎をくいっと上げた。
「えー、どこ」
智子は病室内を見わたすが和之の姿は見えない。
「おばちゃんこそおかしなこと言っちゃってどうしたの、和ちゃんなんかいないよ」
「和之は、そこに、いるじゃない」
と今度は指差しながら小百合は言った。
「おばちゃん、和ちゃんが大変なことになって、それに、ちぃちゃんも倒れちゃったんだから、おばちゃんが今はしっかりしないと、おかしなこと言ってないでね、それじゃ私仕事だから、もう大声は出さないでね」
智子はそういいながら、再度病室を見渡してからドアを閉め、ナースステーションへ戻った。
小百合は、狐に化かされたような顔をして智子が閉めた病室のドアを見つめていた。
そして、しばらくったてから、和之の方を向き、
「和之、智子ちゃんまで、目がおかしくなっちゃったよ」
「おかぁちゃん、智子ちゃんの目はおかしくないよ、僕の姿は、おかぁちゃんしか見えてないよ」
「並木さんにだって、この馬鹿息子見えてるじゃないか、馬鹿にするんじゃないよ、ねぇ、そうですよね、並木さん」
「いえいえ、私達、二人の姿は、奥さんだけに見えてるようです」
「あら、並木さんまで」

続く・・・

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ちぃちゃん遊ぼう(31)
「おかぁちゃん、さっきも言ったけど、僕は幽霊で、並木さんは天使なの」
小百合は和之がしゃべっていることを無視して、
「並木さん、この子の、頭、元に戻りますか?、やっぱり、事故のせいですか?、これでも父親となる身なんです、このままじゃ、ちぃちゃんが不憫で・・・」
並木は、自分の声を落としながら、
「奥さん、驚かれないようにおねがいします、私は天使で和之さんをお迎えにやってまいりました、いささか止ん事なきことがありまして、天国に連れて行く前に、和之さんに手伝って頂く事があり、こちらにやって参りました」
「はぁー、それで、ほんとに、この子は幽霊なんですか?」
「はい、私も、天使であり、鬼でもあるんです」
と並木は言いながら、自分の姿を、3メートルほどの鬼の姿に変身させ、今にも小百合を頭からかぶりつくように真っ赤な口を開けた。
小百合は、「ぎゃー」と悲鳴をあげて、そのまま後ろに飛びのいたが、後ろの壁にしたたか後頭部をぶつけてしまい、そのまま気を失って、ずるずると体を横たえてしまった。
「あっ、おかぁちゃん、大丈夫かい」
と和之は小百合の元へ駈け寄り、小百合の体を起こそうとするが、すり抜けてしまって思うように出来なかった。
「並木さんも人がわるいなぁ、突然、そんな姿になったら、いくら、おかぁちゃんでも、びっくりしちゃうよ」
和之は振り返りながら言った。並木は元に姿に戻り、
「これならば、信じていただけると思ったのですが、いささかやりすぎましたか」

続く・・・

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「ちぃちゃん遊ぼう」の感想

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ちぃちゃん遊ぼう(32)
和之は、小百合のほほを叩きながら、
「おかぁちゃん、おかぁちゃん、おきなよ」
と起こそうとするが、和之の手のひらは小百合のほほにめり込むだけで、効果がなかった。
そんな和之の肩を叩き、並木はこれからの事を説明しはじめる。
「岩下さん、奥様にはすまない事を致しましたが、丁度、邪魔されず静かにお話しができます」
「そうだね、おかぁちゃんがいたら、うるさいからね」
和之は自分の母親が気絶してるのに、あっさりと言った。
「その前に、あなたを付け狙っている天使のことを簡単に説明しておきます、彼なんですが、名前はジャン・クロード・バッタイチだったか・・・、すみません、ラストネームは、はっきり覚えておりません」
「僕は映画が好きだから、その名前は良く知ってる、でも、それって・・・」
和之が疑いのまなざしで見ているので、並木は咳払いをしながら、
「すみません、私もフルネームで名前を覚えていません、しかしジャンだけは確かです」
と素直に認めた。
「そうですか、外人さんなんだね、並木さんには悪いけど、やっぱり、天使は外人さんのほうが似合うよね」
「いいえ、れっきとした日本人です」
「なんだ、それ」
「天使になるとき、自分の名前や姿かたちは自己申告ですので、自由なんです、私の場合は生前のままですが、殆どの者が、憧れた人の名前を選んだり、その容姿に化けます」
「あはは、それじゃ、彼はその映画俳優に憧れていたんだ」
「きっと、そうでしょう、・・・この話しは次にするとして、そのジャンですが、私が推測すると、たぶん、彼は千鶴さんの意識下に潜んでいると思います」
「どうすれば、ジャンを見つけ出すことができるの?」
「千鶴さんの夢の中に入り、ジャンを探しましょう」
「そんな事が出来るんだ」
「はい、岩下さんも、一度、千鶴さんの夢に入ってます」
「えっ、いつ?」
「あなたが、事故に遭われたときです、あなたは、天国の受付に来られず、千鶴さんの夢の中へと吸い込まれていきました」
「あっ、あの公園、あの小さな女の子、思い出した、千鶴だ!」
「そうです、お二人が初めて出会った場所です、あの時に何もなければ、こんな事は起きませんでした、さぁ、千鶴さんの夢の中へ急いで行きましょう」
「でも、おかぁちゃんを、このままにしておけないよ」
「今の叫び声で、あの看護師さんがいらっしゃると思われますから、そのままにしておいて、急ぎましょう」
そして、並木は和之の腕をつかんだ。
その瞬間、二人は淡い光の雲のようになり、ベットで横たわる千鶴の体へ、すーと吸い込まれるように入っていった。

続く・・・

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ちぃちゃん遊ぼう(33)
和之と並木が消え去った後、小百合の体から、閃光と共に一人の男が現れた。
「あっぶなー!、あの並木のおっさんがしゃしゃり出てくるとは思わんかったわぁ、天長(仏様)もたいがい今回の事は頭にきてるみたいやなぁ」
その男は、栗毛の短髪に、タンクトップにスウェットパンツを着て、筋骨隆々、格闘技のミドル級クラスの体格はあり、顔立ちもなかなかのハンサムである。
「並木のおっさん、俺の名前をまだおぼえてないんかぃ、なんでバッタイチなんやねん、思わず飛び出てヴァンダムやろってつっこみそうになったやないけ」
とぶつぶつぼやいている。
彼が、並木の言っていた、地獄から逃亡した天使、ジャン・クロード・バッタイチである。
-----------------------------------------------------------------
ジャン:「おい、こら、作者、なめてんか、お前までボケてどないすんねん 」
作者:「すんません、以後気をつけます」
-----------------------------------------------------------------
彼が、地獄から逃亡した天使、ジャン・クロフォードである。
そこへ、病室のドアを威勢よく開けながら、看護師の智子が、
「おばちゃん、何回言えばわかるのよ、ここは、病院だから・・・、おばちゃん、どうしたの!」
と言いかけて、小百合が床に倒れているのを見つけた。
「おっ可愛いねぇちゃんやんか、あんなおばはんより、やっぱこんなねぇちゃんのほうがええわ 」
ジャンは、小百合を抱きかかえ左腕の脈拍を確かめている智子に、まぶしく耀きながら、智子のふくよかな胸の谷間に飛び込んだ。

続く・・・

作者からのお願い

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翻訳のおねがい
またまた、作者からのお願い!

でてきた、悪役(?)と思われるジャン・クロード・ヴァンダム、ちがった、ジャン・クロフォードの台詞を関西弁にしたいと思ってます。
そんで、下記の台詞を追っかけで編集しますので、関西弁に直して下さい。
誰か、奇特な方、お願いします。
たぶん、ハイプレッシャーさんと茉莉ちゃんがやってくれそう。(笑)

1、「あぶねえ、あぶねえ、あの並木のおっちゃんがしゃしゃり出てくるとはおもわなかった、天長(仏様)もよっぽど今回のことは頭にきてるみてぇだな」

2、「並木のおっちゃん、俺の名前をまだ覚えてないのか、なんで、バッタイチなんだ、思わず飛び出て、ヴァンダムだろって、つっこみそうになったじゃないか」

3、「おい、こら、作者、なめてんのか、お前まで、ボケてどうすんだ」

4、「おっ、可愛いねぇちゃんだな、あんな、おばさんより、やっぱ、こんなおねぇちゃんがいいわ」

コメントに入れといて下さい!

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結婚
貴方が生きた証を、私は見ています。
貴方の良い所も悪いところも、誰も知らない貴方を私は見ています。
それが、貴方と共に生きてきた証です。

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暗闇の中、声をころして泣いている。
この世界に生まれてきたことが悲しい。
さぁ、泣くのはおやめ
俺が静かにブルース唄おう、君の悲しみを癒してあげよう。
この、ブルースで

身体と心を、みずから傷つけている。
この世界に君がいることを望んでいるよ。
さぁ、泣くのはおやめ
俺が静かにブルース唄おう、君の悲しみを癒してあげよう。
この、ブルースで

まだ、あの人はいるの?
君を愛してくれるよ。
俺と同じさ、君のことが好きさ。
おやすみ、君が旅立つまで、傍にいるから

さぁ、泣くのはおやめ
俺が静かにブルース唄おう、君の悲しみを癒してあげよう。
この、ブルースで

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女性の共有、男性の思考
女性は共有することから始める。
男性は考えることから始める。
女性は男性を独占したいと願う。
男性は女性に麻痺してしまう。

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恋の結末
お互い好きだけど事情があり、二人とも結ばれることのない恋を、数年かけて実らせた。
その恋が終わるのも、その時間の分だけかかりました。

一目ぼれから始まり、二人とも一気に燃え上がりました。
あれだけ燃え上がった恋ですから、冷めるのも早いのかも知れないね。

傷ついた心を癒してくれた。
それを、愛する事と誤解したのかもしれない。
傷が癒されぬ事を知り、卑怯にも逃げる事ばかりを考えた。
未だ、結論はでないが、春の訪れと共に、散りゆく桜となるでしょう。

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ちぃちゃん遊ぼう(34)
「岩下さん」
和之は、並木の呼ぶ声で意識を取り戻した。
あたりは暗闇であったが、並木の顔は暗闇の中で青白く耀いている。和之はたとえ方が変だが、あの股間を痛打したとき以上の胸苦しさを感じていた。
並木は和之の体を起こすのを手伝いながら、千鶴のあまりにも深い悲しみを取り除くのは容易な事ではないと考えている。
「並木さん、ここはどこですか?」
「千鶴さんの夢の中です」
「僕が前に来たときの公園では、なんといえない心地よさを感じたけど、ここはとても息苦しくて、とても寒い」
「そうですね、千鶴さんはとても悲しんでいらっしゃいます、このままでは、生きる事を捨てかねません、向こうにある、かすかなともし火だけが、唯一残されているようです」
と並木は暗闇の中に、マッチの火が今にも消えそうな明かりを指差しながら言った。
和之は並木の指差す方を見るが、それが、どこにあるかわからなかった。
「どこですか?、僕には見えません」
「そうですか、岩下さん、私も出来る限りの手助けはしますが、千鶴さんを救えるのはあなただけです、私はここから動けないのです、あのともし火を見つけて、励ましてやって下さい」
和之は並木の言葉にうなずきながら、指差す方へと向かった。
和之は一歩一歩進むが、寒さのため体が震え、まるでアニメのように歯をガチガチ鳴らしながら、明かりを探す。
十歩ほど進んだ先に、かすかな小さな明るい点を見つけた。
和之はそれを両の手のひらで掬い上げるようにつつみ込み、その明かりを覗き込んだ。
その中は、紫色や淡いピンクのパステルで描かれた世界が広がっていた。
和之はレモン水のように、かすかに香り立つレモンの香りをかいで、
「千鶴の匂いがする」
とその明かりに鼻を近づけていくと、和之の体はそのまま吸い込まれていった。
そこは、風や雲にそれぞれ色がついていて、空気も淡いピンクや水色と色とりどりだった。
和之は淡いピンク色の綿菓子のような空気を吸い込み、口から息を吐き出すと、レモンイエローの息になった。

続く・・・

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春の陽気
春の陽気に誘われて、靴下を脱ぐ。

息を止めたまま、窓を開き、大きく深呼吸。

臭かった・・・

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ちぃちゃん遊ぼう(35)
床一面に広がるレモンイエローの空気の絨毯に、千鶴は両手を胸に置き横になっていた。
白い木綿のネグリジェに、10代ぐらいだろうか、幼い顔ですやすやと寝ているようであった。
和之は千鶴の右の首筋に手を入れて、上半身を抱え起こした。
「千鶴、僕だよ、目をさまして」
と千鶴の頬を優しくなでながら唇に軽くキスをする。
千鶴がゆっくりと、瞼をあけて、和之の顔を見た。
そして、千鶴の左腕がしなやかに反りながら、和之の頬に向けて勢いよく振り上げられた。
ばちーん!
和之の体は、後方へ30メートルは飛んだであろう。
和之は顔を歪ませ、空中でスローモーション撮影のように低い地鳴りのような声を出した。
「なー、ぜー、だー、よー」
和之の体はバウンドを繰り返しながら無事着地した。
そのとき、右目から涙が流れ落ち、鼻からひとすじの深紅の血液がたらりと垂れた。
和之は這い蹲り、芋虫のように匍匐前進をしながら涙と鼻血を拭って、千鶴の方へ進む。
千鶴はネグリジェの胸元をぎゅっと掴み、険しい顔で和之の様を凝視している。

続く・・・

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ちぃちゃん遊ぼう(36)
和之はやっとのおもいで、千鶴の足元までたどり着いた。
しかし、千鶴は片膝を立てながら、後ずさりをする。
和之が四つんばいでにじり寄り、
「ちづ・・・」
と言いかけたとき、千鶴は、
「きゃー」
と叫び声を上た。
そして、千鶴の右足の踵が和之の顔面へもろに入って、すでに止まっていた鼻血が、またたらりと垂れた。
それから千鶴は、すかさず猪木のアリキックか、はたまたステップキックを連続して繰り出す、やがて和之の顔はみるみる膨れ上がり、15ラウンドをフルに戦った後のボクサーの顔のようになった。
和之は両腕で上半身を支えきれなくなり、顔から床に崩れ落ちた。
そして、膨れ上がった瞼の間から、千鶴を見て、
「あっ、白いパンティーだ」
と言ったとたん、後頭部に踵落しが炸裂した。
和之は意識が朦朧としながら、
「並木さん、僕、もう駄目、死んじゃう」
と呟いた。
すると、和之の頭の中に直接、並木の声が入ってきた。
「岩下さん、幽霊は死にません」
「それでも、もう、僕、意識がなくなってきました」
「岩下さん、それは気のせいです、それよりも、今はどんな状況ですか」
「千鶴が若くなっていて、たぶん、高校1年生くらいのときのようです、だって、胸が殆ど無い、それとすごく凶暴です」
「そうですか・・・、もしかすると・・・、岩下さん、千鶴さんは、現在のあなたの姿を知らないときの夢を、見ているのかもしれません、私があなたを若返らせますので、それで再度チャレンジして下さい」
すると、和之のスーツがスカイブルーのジャージへと変わり、あれだけ膨れ上がっていた顔も、みるみる若返っていき、19歳の和之の顔となった。

続く・・・

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ちぃちゃん遊ぼう(37)
和之は体がとても軽くなり、そして勢いよく立ち上がった。
それから、柔軟体操をかるくやり、ボクサーのように軽いフットワークから左ジョブを繰り出し、シャドーボクシングを始めた。
「さあ、こい」
和之は千鶴に向かって、そう叫んだ。
「あっ、岩下先輩」
千鶴は和之を見つめながら、立ち上がり、すぐさま和之の背中へ隠れるように回り込んだ。
そして、可愛い声で、
「岩下先輩、ここに、いやらしい人がいて、私、襲われそうになったの」
と言った。
和之はあたりをきょろきょろと見わたし、誰か他の奴が居たのかという顔をしながら、その場で体をくるりと360度のターンをした。
しかし、誰も見つからない。
「千鶴、誰も居ないよ」
「岩下先輩が追い払ってくれたんだ、嬉しい、それと、千鶴って・・・」
千鶴ははにかみながら、名前で呼ばれた事をとても嬉しそうにしている。
「千鶴は千鶴だろ?、あっそうか、ちぃちゃんだった」
和之はその頃、千鶴を「ちぃちゃん」と皆と同じように愛称で呼んでいた事を思い出した。
千鶴は顔を真っ赤にし、うつむきながら、
「千鶴でいい・・・」
と言った。

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1章 プロローグ
1章 プロローグ

ちぃちゃん、そのお人形可愛いね

おばあちゃんにいただいたの

いつもちぃちゃんのおそばにいるの

いつもおねんねしてるの

いつもおはなししてあげるの

ちぃちゃんはママなんだよ

私は、うたた寝をしていたようです。
幼い頃に見知らぬ人にあの頃私がいつも抱いてた人形の事について聞かれた事の夢でした。

日は沈み部屋は薄暗くなっていました。
私はリビングのソファーから立ち上がり、ドアの入り口にある照明のスイッチをONにする。
壁にかけてある時計が、5時45分をさしている。
「もう、こんな時間だわ、急いで夕食の準備をしなくちゃ」
私は独り言をつぶやきながらキッチンへと向かう。

冷蔵庫の扉を開けて、今日の献立を思い浮かべながら、整然と並んでいるタッパーの中から「パスタ」とシールに書かれているものを取り出した。
タッパーのふたを開けると咽返る匂いで吐き気を感じ、私は急いでシンクへ顔を埋める。
「私、どうしたのかしら、風邪でもひいたのかしら、それとも何か悪いものでもたべたのかなぁ」
お昼に食べたものを思い出していたのだけど、それらしいものは無い。
「もしかして・・・」
私は二ヶ月ほど生理が遅れていた。
妊娠検査薬は準備していたのだけど、検査する事にためらいがあり、明日には、明日にはと先送りにしていました。
夫は子供を授かる事をいつも待ち望んでいました。
でも、私は母親になる事が不安です。

引き出しの中から妊娠検査薬を取り出しトイレに向かう。
検査の結果がでるまでの数分間は、出来ることなら妊娠してない事を願ってました。
結果はやはり妊娠しています。
私はリビングのレースのカーテンを開けて、窓の外に思いを巡らし夫へ告げる言葉を探します。
「和之さんは喜ぶだろうなぁ、きっと、お母様へ電話されるでしょう」
窓には、夕闇が訪れ、家々に明かりが灯り始めます。
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2章 天使登場
2章 天使登場

「お疲れ様、来週も宜しくな」と和之は駅のホームで同僚らと別れ、改札へと向かう。
いつものように和之はエスカレーターを駆け上がる。
エスカレータを降り定期を取り出そうと、背広の内ポケットに手を入れるが、定期入れが見当たらない。体中を手探りしながら改札まで歩くが、定期入れらしいものが見つからない。
改札の前で、再度背広のポケットすべてに手を入れ探すが無い。
鞄の中も探すが見つからない。その時、和之の前に初老の男が立ち、定期入れを差し出した。
「お探しのものは、これではないですか」
和之は目の前に差し出されたチャコールグレーの定期入れに、岩下和之と名前が書かれている定期を確認した。
「どうも、有難う御座います。今、探していたところでした。助かります」
和之はその初老の男性に深々と頭を下げた。
「あなたが、エスカレーターを駆け上がろうとしたときに落ちたようですね」
和之は照れくさそうに、「すみません、階段を見ると駆け上がらないと気がすまない性分でして」
「お若いですね、私からしてみれば羨ましい限りです」
「何かお礼をしたいので、もし宜しければ、僕の行きつけの店がすぐ近くにあるんですけど、いかがですか」
和之は人懐っこい性格で、知合った人を気兼ねなく誘うのである。
「いえいえ、お礼など宜しいですよ、私も先を急ぎます。あなたとはいずれお話しする機会がありますから、その時にでも」
と、初老の男性は改札をそのまま通り過ぎていった。
和之は広げてある鞄の口を閉じながら、あわてて後を追おうとしたが、鞄が自動改札の縁にぶつかり鞄の中身が辺りに飛び出してしまった。
和之は散乱した鞄の中身を、急いで拾い集め改札をでた。
小走りに駅を出ながら辺りをきょろきょろと見回し、奇妙な事を言う人だなと思いながら、初老の男性を探す。
駅前の交差点を歩くあの初老の男性を見つけた。
初老の男性は、すでに交差点の横断歩道を渡りきり反対側の歩道に着いたところであった。
まだ、信号は青の点滅だった。
「急いで渡ればまだ間に合う」
和之は横断歩道を全速力で駆け抜けようとした。
初老の男性は、振り向き和之を見ていた。
和之は大声で、「すみません、ちょっと待ってください」
その時、和之の目に強烈な閃光が飛び込んできた。
初老の男性は、
「彼にはすまない事をしたが、これから償うとしよう」とざわめく人ごみの中から掻き消えていく。

和之は思わず両腕で顔を被っていた。その後は意識が薄れながらも、体が重力に逆らって浮き上がっていくのが感じ取れた。
そして深い眠りから覚めたような感覚と心地よさを感じて、やがて和之は瞼を開ける事が出来た。
和之は見知らぬ場所に立っていた。
「ここはどこだろう」とつぶやきながら自分の周りの景色を確認する。
そこは児童公園の入り口であった。
目の前にちっぽけな砂場があり、右側にジャングルジムとその横に連なって滑り台があった。
左側にはイチョウの木が数本植えてありその奥にブランコがあった。
そこに、幼稚園児くらいの女の子がブランコにちょこんと腰掛て、人形を赤ん坊を抱くように抱え、その人形に向かって何か話しかけていた。
周りには人影は見えない、その女の子だけであった。
「どうして僕はここにいるんだ。目の眩む光を見たときは駅前の交差点にいた筈なのに」
和之はここがどこなのか、どうして自分がここにいるのか不思議でたまらなかったが、女の子になぜか話しかけたい衝動に駆られた。
和之はその女の子の元へ歩き出した。
「お嬢ちゃん、ここはなんていう所かな」
こんな幼い子に聞いたって分かるはず無いのにと思いながらも、和之は聞いてみた。
「ちぃちゃんのおうちのちかくのこうえんだよ」
「やっぱりな、こんな答えしか返ってこないよ」
和之は自分の馬鹿さ加減に呆れながら、この女の子としばらく時間をつぶしていようと考えた。
「しばらくすれば、母親が迎えに来るだろう、その母親に聞けばいいや」
公園を出て道行く人を探せば良いはずなのに、和之はこの公園から離れるのが嫌だった。
和之は女の子に話しかける。
「お名前はちぃちゃんと言うんだ」
「わたし、ちいちゃん、このこ、みなちゃん」
「そうか、そのお人形可愛いね」
「おばあちゃんにいただいたの、いつもちぃちゃんのおそばにいるの」
「そうか、おばあちゃんからの贈りもなんだね」
「いつもおねんねしてるの」
「どうして、おねんねしてるの?」
「いつもおはなししてあげるの」
「おねんねする時にお話してあげるの?」
「ちぃちゃんはママなんだよ」
「そうか、ちぃちゃんはみなちゃんのママでおねんねする前に話してあげるんだね」
「みなちゃん、いまおねんねしてるから、おじちゃん、ちぃちゃんとおにごっこしよう」
和之は時間を忘れて、その女の子と鬼ごっこやら砂場でお城を作ったりと遊んだ。
「ちぃちゃん、おじちゃんのおよめさんになってママになる」
「そうか、それじゃ、ちぃちゃんが大きくなるまで、おじちゃん待ってるね」
「やくそく」と女の子は小さな小指を和之の前に差し出した。
ませた子だと、和之は照れながらも小指を出し指切りをした。
「さて、そろそろお時間なんでなので行きましょうか」
和之は振り返ると、あの初老の男性が立っていた。
「あなたは・・・、なぜ、ここに・・・」
和之は戸惑いながら、記憶をたどる。
しかし、目の前が霞んで、また意識が遠退いていく。

プルル~、プルル~、プルル~。
電話の呼び出し音が鳴っています。夫からの電話でしょう。
私はリビングから玄関先に置いてある電話機のほうへと向かいました。
私は受話器を取り、「はい、岩下でございます」
「こちらは、緑ヶ丘署の橋本と言います」
「・・・はい、岩下ですが、何かあったのでしょうか?」
「岩下和之さんの奥様はいらっしゃいますか」
「私が妻の千鶴ですけど・・・」
「旦那さんが、駅前で交通事故に遭われまして、緑ヶ丘総合病院に搬送されたところです」
「夫の怪我の具合はどうなんでしょうか?」
「私も旦那さんの鞄からご自宅の電話番号を調べおかけした次第で、ご容態は存じておりません」
「どうも、ありがとうございます、これから直ぐに病院へ向かいます」
私は電話を切ってから、すぐに出かける支度をしました。
「あの予言が当たるのかしら・・・、そんな事はないわ、和之さんの怪我は大した事ないわ」
私は自分に言い聞かせるように、不安ながらも夫の怪我はそれほどでも無いと思う事にしました。
私は玄関の戸締りをきちんと確かめて、駐車場への緩やかなスロープを下り、私の軽自動車のドアを開け乗り込みました。
私は軽自動車の中で、和之さんがいつも出張で使う旅行鞄を開けて、和之さんの下着とジャージ、洗面用具一式の入ったポシェット、私の財布の中の健康保険のカードを確かめました。
大丈夫、忘れ物はなさそうです。
それから、すばやくエンジンをかけ、緑ヶ丘総合病院へ向かいました。
病院に着くまでの道のりで信号待ちをしていると、私の大好きな和之さんの笑顔が過ぎりました。
ふと涙があふれ出てきて、頬から一滴流れ落ちました。
「泣いてちゃ駄目、きっと和之さんは元気でいてくれるわ、いつものように『千鶴、ごめん、また怪我しちゃった』と、無邪気な子供のようなあの笑顔で迎えてくれるわ」
私はセカンドバックからハンカチを取り出して、頬から流れ落ちる涙をハンカチで拭き、バックミラーに写る自分の顔を見ながら、無理に笑顔を作りました。
約15分ほどで、病院の駐車場に着きました。
それから、救急病棟の受付窓口に向かいます。
そこには、警察官の方がお二人いらっしゃったので、私の名前を告げて和之さんの居所を聞こうと思いました。
「あの、すみません、わたし、岩下和之の妻の千鶴と申します、先ほど電話をかけて頂いた、緑ヶ丘署の橋本さんでしょうか?」
「いや、私でないが、ちょっと待ってくださいね、おーい、橋本!」
5メートルほど先のほうで、長いすに腰掛て男性と話をしている警察官の方が、こちらに振り向きました。
そして、椅子から立ち上がり私達の方へと歩み寄りました。
私は、頭を下げ会釈しました。
「奥さんですか?」
「はい、主人は今どちらに・・・」
「旦那さんは集中治療室にいます」
私は集中治療室と聞いて涙がこみ上げて来ました。
「夫の容態はそれほど悪いのですか?」
「ここへに搬送されたときは心肺停止の状態だったと、先ほど看護師さんから聞きました」
「集中治療室はどちらですか?」
「この廊下の突き当りです」
私は警察官の方に会釈して、足早に集中治療室に向かいました。
警察官の方と話されていた男性が、長いすから立ち上がり、私に向かって腰を曲げ深々と頭を下げています。
私は、集中治療室の前で待っていると、看護師さんが私に気づきクリップボードを抱えて来られました。
「岩下さんのご家族の方ですか?」
「はい、妻です、夫の容態はどうなんでしょう」
「今、先生が蘇生処置を施しています、私のほうから幾つかお聞きしたい事がありますからよろしいですか」
「はい」
私は看護師さんから和之さんの事をいろいろ聞かれ、それを看護師さんは問診票に記入していました。
すべて書き終えると、看護士さんは、
「先生からお話されると思います、しばらくこちらで待機してください」
「はい、和之さんのご両親に電話したいのですが、こちらでかけてはいけないですね」
「携帯は病院内はすべて禁止してますから、外に出てかけて下さい」
「はい、わかりました」
私は外に出て、岩下家に電話をしました。そして、お母様が電話に出られました。
「千鶴ですが今病院から電話してます、和之さんが・・・」
「また、あのバカ息子、今度はどこかい?、また、階段から転げ落ちて、腕でも折ったかい?、ちぃちゃんにいつも心配ばかりかけて申しわけないねぇ、私からもきつく言っておくからね」
私は言葉につまり返事が出来ません。
「どうしたの、ちぃちゃん」
「・・・」
「どこの病院だい?、お父ちゃんとすぐ行くから、どこだい?、緑ヶ丘病院かい?」
私が返事をしないため、お母様もただ事では無いと気が付かれた様子です。
「・・・はい」
「まってな、お父ちゃんといくから」
「はい、待ってます」
電話の奥からお父様を呼ぶお母様の大きな声が聞こえます。
「お父ちゃん、お父ちゃん、和之が怪我したらしいから、軽トラ、店の前にだしな」
そして、
「ちぃちゃん、店のシャッター下ろしたら、軽トラすっ飛ばしていくからね」
「はい、出来るだけ、早めに来て下さい」
私は携帯を切り、集中治療室へ戻りました。

和之が気が付くと今度は川辺に立っていた。
川の流れは穏やかで対岸は濃霧で視界が悪い。
うしろを振り向くとそこは野原になっているのだが、普通の景色ではなかった。
山も建物もなく平坦で遠くに地平線が見える。
和之は空を見上げると、雲ひとつなく青空というより淡い光に包まれてる感じであった。
「ここはどこだ、夢でも見てるのかなぁ、できればもっと素敵な夢であれば楽しめるのに」
と和之はぼやきながら川辺を下流の方へと歩き出した。
しばらく進むと渡し舟の渡船場らしきものが見えた。
「これまた風流な造りだなぁ、まるで江戸時代からあるような渡船場だよ」
和之は木造の渡船場をじっくり観察した。
「おっ、これはヒバじゃないか、金がかかってるなぁ、どこの自治体が金を出したんだ、こんなへんぴな所に豪勢なものを造って税金の無駄遣いだって、船頭さんに聞いてみようって、ところで船頭さんはどこにいるのだろう、あっそうだ、これは僕の夢だ、自治体なんかあるわけない、そうだ、そうだ、僕の夢だから船頭さん出て来いと念じてみよう」
しかし、和之がいくら念じても船頭なるものは一向に現れなかった。
和之は諦めて川面に目をやると、川の流れにゆらゆらと一艘の舟が漂っていた。
和之は柱にロープではなく縄で括りつけられた舟を引き寄せようと中腰になって力任せに引くがびくともしない。
「こんなに重い舟なんてあるのかよ」
その時「岩下和之さん」と呼ぶ声がした。
「はい!」
和之はびっくりして縄を手放し大声で返事をした後、直立不動になった。
そして恐る恐る振り返ると、そこにあの初老の男性が立っていた。
「あなたでしたか、僕は船頭さんが出てきて怒られると思っちゃったよ」
和之は照れ笑いをしながら初老の男性に話した。それから続けて、
「あなたを追いかけたら、変な場所に移動しちゃったよ、公園でしょう、それとここ、ねぇねぇ、もしかして、あなたは宇宙人?、地球人の僕を拉致しようとしてるとか」
和之は目を輝かせて期待に胸を弾ませ初老の男性からの返事を待っている。
「うっうん、おほん、私は宇宙人じゃありません、天国から来た天使です」
と初老の男性は咳払いをしながら返事をした。
和之は天使だと聞いて腹を抱えながら大笑いをしている。
「おじさん、おじさん、真面目な顔して冗談はよしてくれよ」
「失敬な、冗談を言ってるつもりはありません、私は天使です」
「おいおい、おじさんが仮に天使だとしましょう、それじゃここは天国?、、僕は死んじゃったのかよ」
「はい、あなたは、天国の受付にいます」
「あはは、そんじゃここは三途の川なのか、仏教じゃ懸衣翁か奪衣婆でしょう、天使が船頭なんて、日本と西洋のごちゃ混ぜ、可笑しくて、可笑しくて、死んじゃいそう」
「・・・、ですから、あなたは死んだのです」
初老の男性は笑われながらも毅然とした態度で話し始めた。
「よくある事です、自分が死んだという事実を理解しようとしないため、天国のサービスの一環として死後の世界を生前思い描いたとおりのイメージで再現するようにしてます」
「へぇ~、天国もサービス業みたいなもんなんだ、お客さんに心地よく天国に来ていただくようになのか、そんじゃ、僕が別のことを考えればそれに景色が変わるんだね」
にこっと微笑みながら和之は瞼を閉じて、茅ヶ崎の海岸でグラビアアイドルの女の子達が水着で和之の周りを取り囲んでいる風景を思い浮かべた。
そして瞼を開けると、そこは茅ヶ崎の海岸に変わっていたが女の子達は居なかった。
「おじさん、じゃなかった、天使さん、女の子がいないよ」
「おほん、こちらは死者の方だけです、そんなことを思い描いても景色だけで人物までは出せません」
「なんだつまんねぇ、これじゃあサービス怠慢だろ」
和之はよっぽど期待していたようで、その期待を裏切った天使に毒を吐くのであった。
これまでに和之を担当していた天使たちが、和之のことを「疫病神」とあだ名を付けたのがわかると天使は思った。
天使は和之が瞼を閉じてまた何かを思い浮かべている様子なので心の中をのぞいてみた。
天使は和之の心に描いてるイメージを見て、
「厄介な人だ、そんなことは無理でしょう」
と和之へのサービスは取りやめて事務手続きに最適な事務所の風景に切り替えた。
和之は鼻の下をのばしながら、片目だけを開けた。
「あれ、僕はこんなの思い浮かべてないよ、ここは僕の会社の事務所じゃないですかぁ~」
和之がいろいろ喚いてるのを無視して天使はこれまでの経緯を話し始めようと、
「これから今までのことをお話しますので席について下さい」と言った。
和之はしぶしぶ自分の机の椅子に腰掛けた。
「あなたは10歳で亡くなる運命だった、しかし、こちらの事務手続きのミスと、あなたの突飛な行動で生き永らえてしまいました」
和之はきょとんとした顔で聞いている。
「それから、あなたの生命力はゴキブリ並、いや失礼、並々ならぬもので、そのおかげであなたを担当した天使たちはすべて左遷されております」
「ゴキブリ並ってのは何だよ、天使の癖に礼儀ってのしらねぇなぁ」
「こちらでは皆、あなたのことを疫病神、いや失礼、トラブルメーカーとお呼びしてます」
「なんか聞いてるといけすかねぇ~」
和之はさっきのサービスの中止と自分のことを天使たちが快く思っていなかったことで不愉快であった。
しかし、和之は気転が早いと言うか、物事にこだわらない性格のため次のことを考え始めた。
「ふ~ん、左遷か、ねぇ、ねぇ、左遷ってどこに飛ばされるの?」
「どこって、決まってるじゃありませんか、地獄ですよ地獄、ここは天国と地獄しかありません」
「やっぱり、地獄なんだ、天使さん、次は地獄に連れて行ってよ、けっこう楽しめるかも」
にたりとしながら和之は天使に地獄行きをせがんだ。
「あの、観光旅行ではありませんが・・・」
「だって、血の池地獄も見たいし、地獄の鬼も見たいし、迷惑かけた天使たちに一言お詫びもしたいしさぁ、いいでしょう、連れて行って、お願いしますよ」
天使は自分から地獄行きを望んだ死者を初めてまのあたりにしたので、少々戸惑い気味である。
「無理です、地獄は現世の話に出てくるようなところじゃないんです、汚れた魂を浄化するところですから、死者の皆さんが穏やかに過ごして頂くところです、それに鬼もいません、天使がいるんです」
「あれ、いいところなら、それじゃ、左遷じゃないでしょう」
「いえいえ、左遷は左遷です、仕事の量は膨大です、話を早くすると天使のほうが、地獄に行くと地獄の苦しみを味わいます、なぜかと言いますと、自己中心的な人や、ものすごく性格の悪い死者達が集まっているんです、その死者の方たちのお世話をしたり、慰めたり、浄化するにはどうすればいいかなんて悩みを聞いてあげたり、大変なんです」
「ほう、やっぱり、地獄の方がよさそうだね」
天使は拙いことを言ってしまったと後悔しはじめていた。そして、どうしてこの人のペースになってしまうのだろうと反省しながら、天国行きの話しを進めようとしている。
「地獄もいいですけど、まず、天国を先に見学されてから地獄を見学するというのはどうでしょう」
天使は一度天国に連れて行きさえすれば後はなんとかなると考え、この場を打開する為に嘘をついた。
「おっ、その話しのった!」
和之は天国も地獄も両方見れると得した気分で了承した。
その言葉を待っていたかのように、天使は和之の前に承諾書を差し出しながら、
「この承諾書に名前を記入して下さい」
和之は差し出された承諾書を受け取る。

***********************
             承諾書
天長殿

名前      は天国において天長殿のあらゆる
ご指示に従う事をお約束いたします
***********************

和之はその承諾書を一瞥し、
「ねぇ、ここに書かれてる『天長殿』って誰の事ですか?」
「現世ではその方は仏様と呼ばれてます、天国で一番偉い方で、会社で言えば社長にあたります」
「へぇ~、そんじゃ、地獄の偉い人は?」
「閻長です、もちろん閻魔様のことです」
「おもしれぇ~、「てんちょう」さんに「えんちょう」さんなの、冗談でしょう」
和之は腹を抱えて笑い出した。
天使もやっぱり笑ったと思いながらも、
「冗談じゃないのです、ここなら笑っても許されますが、ご本人の前では決して笑わないで下さいね」
と天使も笑いを堪えながらそう言った。
まだ笑い続けている和之に、天使はどこからとも無くペンを取り出し和之に手渡した。
「名前のあとの空欄に、岩下和之とご署名をお願いします」
「あはは、あっは、はい、ここですね」
和之が承諾書に名前を書いていると、ズンズンズンズン、ズンズンズンズン、ピンポン、パポンとメロディーが流れ出した。
天使が椅子にかけてあったコートから携帯電話を取り出して、声をおさえ誰かとやり取りをしている。
和之は聞いたこと無いメロディーなのでそのメロディーに興味がわき、名前を「岩下和」まで書いてペンを置いた。
和之はその着メロを教えてもらってから名前の続きを書こうと考えていた。
天使の電話の相手は天長(仏様)であった。
天使の顔が徐々に青ざめていき、そして誰もいない壁に向かってお辞儀をし携帯電話を切った。
「岩下和之さん、大変なことになりました、急いで下界に戻って下さい」
「でも、まだ、名前、書いて無いよ」
「そんなことはどうでもいいです、まず、あなたが事故に遭った場所に戻しますから、奥さんに至急会って下さい、私もあとから追いかけます」
「わかったけど、その着メロをおしえ・・・・」
和之はまた意識が遠退いていった。
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3章 課題
3章 課題

和之の意識が戻ると、駅前の横断歩道でした。
意識がまだはっきりしていない和之に向かって、ライトバンが突進してきます。
「うわっ」
叫び声をあげ、和之は避けることもできないままライトバンに轢かれたと思いましたが、体はライトバンをすり抜けて行きました。
「おおおお、なんともない、僕はスーパーマンになったんだ」
幽霊になったことを、まだ和之は気がついてない。相変らず自分の都合の良い方へと物事を考えている。
「さあ急いで、家に帰ろう、僕の大好きな千鶴が家で待っている、今日起きた不思議な事を話してあげよう」
和之は、いつもの帰り道を歩いていると、家の近くの交差点で千鶴の軽自動車が信号待ちで停車しているのを見つけた。
軽自動車の前で、和之は運転席に座る千鶴へ手を振るが、千鶴は和之を見ているとは思えなかった。
和之は運転席側の窓をたたこうとしたら、こぶしがすり抜けてしまった。
「すごいぞ、何でもすり抜ける体になったぞ」
と子供みたいにはしゃぎ、そのまま頭をいきおいよく窓へと突っ込む。
和之の体は千鶴をすり抜けて、助手席までとおりに抜けてしまった。
助手席に座ろうとするが、すり抜けてしまって座れない、和之は千鶴に話しかけようと千鶴の顔を見ると、滅多に泣かない千鶴の目から涙がこぼれていた。
「千鶴、どうしたんだ、なにがあった?」
千鶴は何も答えず、セカンドバックからハンカチを取り出して涙を拭いてる。
「泣いてちゃ駄目、きっと和之さんは元気でいてくれるわ、いつものように『千鶴、ごめん、また怪我しちゃった』と、無邪気な子供のようなあの笑顔で迎えてくれるわ」
「千鶴、僕はここにいるよ、聞こえないの?」
千鶴に和之の声は届きません。
信号がやがて青に変わり、千鶴はアクセルペダルを踏み込み軽自動車を発進させました。
和之はその場に取り残され、呆然と立ち竦んでいた。
「僕は、あの天使が言ったように、死んでしまって、今は幽霊となってしまったんだ」
和之は、やっと、気がついたようです。
これからどこに行こうかと和之は悩んでいましたが、やはり自宅に帰り千鶴を待つことにしました。
和之は家路へとぼとぼとと歩き出しました。
自宅のマンションに着いたころは、すでにあたりは暗くなり、和之はマンションの2階を見上げました。
部屋の明かりがおちているのみると、落ち込んでいる和之をより落ち込ませてしまいます。
いつもなら、どんなに遅く帰っても部屋の明かりが消えていることはありませんでした。
和之はマンションの階段を上ろうとしますが、足がすり抜けて一段さえ上れません。
「どうしたら、いいんだ、部屋にも入れないや」
と和之はぼやきます。
和之は千鶴と二人で見た映画の主人公の幽霊のことを思い出しました。
「あの映画の幽霊は、すんなり階段を上ったり空を飛んだりしてたのに、なぜ、僕は階段さえ上れないんだろう」
和之は階段の3段目あたりに腰掛けるつもりで腰を下ろしますが、階段をすりぬけ体の半分がコンクリートの階段に埋まったように見えます。
和之はふと足元を見ると、地面から数センチほど自分の体が浮いていることに気がつきました。
「おや、僕の体が浮いている、そうか、今まで歩いていると思っていたのは勘違いだったんだ、ずーと、実はただよって僕はここまで来たんだ、それじゃ、2階まで飛べるんじゃないかなぁ、やってみよう」
和之はあれほど落ち込んでいたはずなのに、そのことに気がつくといつもの笑顔で元気を取り戻した。
和之はその場でスーパーマンのごとく片腕を挙げもう片方の腕を腰の位置で曲げ、ジャンプを繰り返しますが、体は数センチも飛び上がれません。ただ、体が階段に埋まる一方でした。やがて、肩まで階段に埋まり首から上だけ階段に残っています。
(「やっぱり、あほや」作者の声)
和之は埋まった階段の中で腕組みをしながら、
「やっぱり、上手くいかないなぁ~、なぜ、だろう、体なんかふわっと浮かび上がって、二階なんかすぐに行けるとはずなんだがなぁ~」
と考え込んでいます。
すると、和之の体が徐々に浮かび上がり2階の踊り場まできましたが、和之は首を傾げながらまだ考えています。
しばらくして、和之は自分の体が踊り場から約50cmほど浮いてる事に気がついた
「おおおお、体が浮いてる、部屋まであと30mくらいだ、やっと帰れるぞ、うれしいなぁ」
和之は体を横に倒し相変わらず、片腕を頭の前に出しもう片方を腰の位置で曲げていました。
しかし、体は前には進みません。
「う~ん、やっぱり、この格好では飛べないらしい」
和之は、やっと気がついたようだ。
それから、和之は、空中で平泳ぎやクロール、バタフライ、はたまた背泳、犬かき、和之の知る限りの水泳種目を次から次へと披露し始めた。
「だめだ、ちっとも前に進まない、なにかいい方法は無いかなぁ」
和之は空中で横になったまま、頭を腕でささえ何も無い空間を指でとんとんと叩きながら考えはじめました。
「あっ、俺はこのマンションまで歩いてきたんだっけ」
和之は体を起して歩き始めるとすんなり部屋の前まで行けた。そして、マンションの横にある駐車場への緩やかなスロープを見て、
「うわっ、駐車場にまわれば、このスロープを上って歩いてこれたんだ・・・、今更気がついても遅いぞ、和之」
と和之は自分自身を諭した。
それから、和之は玄関の扉をすりぬけ部屋へ入った。部屋の中は真っ暗で、和之は照明のSWを押そうとするが押せない。
「こんな、真っ暗の部屋で、一人で待っていたら、幽霊そのものじゃないか、千鶴が驚いてしまう、どうしよう」

私は集中治療室の廊下に備えてある長いすに腰かけて、お医者様が来るのを待っていました。
10分程すると、紺色のスクラブを着たお医者様が私の前へいらっしゃいました。
「奥さん、ご主人ですが、心肺蘇生の後、心機能は回復したのですが、呼吸不全のため人工呼吸器を使用しています、今夜もつかどうか・・・、出来る限りの処置はしているつもりです」
私はお医者様の声がだんだんと遠ざかるように聞こえます。
私は和之さんが死ぬ事なんて考えたくないのに、心の奥底から「ついにこの時が来た」と反響し、徐々に大きな声となって聞こえてきます。
「奥さん、大丈夫ですか、他のご家族の方を呼んで下さい、・・・わかりますか」
呆然としている私を、お医者様が私の肩を抱いて、長いすに腰かけさせてくれました。
そして、看護師の方を呼ばれることを私に告げて、お医者様はこの場から立ち去りました。
私の心の中で和之さんとの思い出が溢れ出てきます。
和之さんと初めて出会ったのは、私が高校一年の時サッカー部のマネージャーになった初日でした。
サッカー部の部室で先輩のマネージャーに、心構えとマネージャーの仕事のあれこれと説明を受けていました。その後ろで部員達が和之さんのことを話していました。
「監督は今日休みだ、楽できるぞ」
「バカ、今日は臨時コーチの岩下先輩だよ、あの50mダッシュだけのきつい練習だ、いやだなぁ」
「『伝説の突進』知ってるか、地区大会の準決勝のこと」
「あぁ聞いた、坂本先輩のカウンターアタックで岩下先輩がドリブルだけで決勝点決めた試合だろう」
「ディフェンダー二人を置き去りに、スイーパーとゴールキーパーをかわして、ゴールポストに頭から直撃して脳震盪をおこし担架で運ばれ、次の日の決勝は病院でなぜか生死をさまよっていた話だろ」
「そうそう、普通ならゴールキーパーかわした時点でシュートすればいいものを、そのままの勢いでゴールに向かって突進するなんてね」
「それから、止まる事を知らない『伝説の突進』なんて呼ばれてるもんな」
私はその話を聞いてそのコーチがとても気になりました。
グランドに出てみると、臨時コーチの和之さんがハーフウェーラインからゴールに向かってダッシュしていました。
部員達がくすくすと笑いながら、「また、やってるよ」と言ってました。
その時のがむしゃらに走っている和之さんを見て、なぜか私は好きになってしまったのです。
その日から毎晩のように和之さんが私の夢の中に現れました。
それからまだ話しもした事の無い和之さんへの想いが募るようになりました。
私が大学生になって、私から和之さんに告白したとき、和之さんが「僕も前から好きだった」と言ってくれたのがとても嬉しかった。
和之さんは私をいつも楽しませてくれた。
*****へ新婚旅行にいったとき、あの占い師が不吉な予言をするまでは、ずーと二人で幸せにすごせると信じてた。
あの占い師が、
「貴女が妊娠したとき、ご主人はお亡くなりになります」
その事さえなければ、いつもいつも幸せでした。
その時でした、私は急に下腹部に重い痛みを感じました。とても我慢のできない痛みです。
「私の赤ちゃん・・・、うっ」
私は痛みに耐え切れず、お腹を抱えて長いすにうつ伏せてしまいました。
看護師の方が、あわてて私のところにかけより、
「奥さん大丈夫ですか、どうしました」と声をかけています。
「私の赤ちゃんが・・・」
「妊娠中ですか?、今すぐ産科の先生をお呼びますから・・・・」
私は激しい苦痛の中、お母様とお父様が入り口の廊下を駆け込んで私の方に向かってこられるのを見つけました。
お母様が、
「ちぃちゃん、どうしたんだい」
と大きな声で私に呼びかけています。
「赤ちゃんが・・・和之さんの・・・」
私は応える事もできず、看護師さん達が私の体を搬送用のストレッチャーに乗せます。
それからの記憶はさだかではありません。

和之はリビングへ歩き出したというか、ふわふわと漂いながらドアを開けるそぶりをしながらドアをつき抜けていった。すると、ソファーの上に黒い人影が見えた。
「うわっ、幽霊」
和之は思わず叫んだ。
「岩下さん、私です」
「びっくりした、天使さんでしたか、てっきり幽霊が出たと思いましたよ」
幽霊が幽霊に驚いてどうするんだと、天使は和之の思考回路の不思議さに親しみを感じはじめていた。
「奥さんに会えましたか?」
「会えたことは会えたんだけどね、千鶴に話しかけても、僕が見えないし声も聞こえないみたいなんだよ」
「それでは奥さんは病院ですか・・・・、困りましたね」
「どうかしたの?」
「言いにくいことなんですが、正直に言いますと、あなたを担当していた天使が地獄から逃亡しまして、もしかすると岩下さんに復讐を企てているのではないかという情報が入りました」
あいも変わらず、和之はきょとんとした顔で、
「天使が僕に復讐?」
「はい、そうです、あなたにです」
「なぜ、僕に復讐するの?」
「その天使はエリート街道を突き進んでいたはずが、あなたを担当したせいで地獄に左遷されたと逆恨みしているようです、それであなたを殺そうと時期を窺い狙っていたのですが、私のほうが先にあなたを事故死にしたため、怒りの矛先をあなたの奥さんとお子さんに向けたようです」
「えっ、それって、天使じゃなく死神でしょう」
「死神なんていません、すべて天使が行います」
「なんだって、天使と死神は一緒で、しかも地獄の鬼もやってて、天使の仕事もたいへんだなぁ」
天使はそんなところを納得されても困るのだがと思いながら、復讐される当事者である和之自身の心配をしないで、天使たちのことを気遣う人柄に、ますます親しみが増していった。
「そういえば、私の自己紹介がまだでしたね、名前は並木と申します、あなたを担当して4ヶ月になります、岩下さんはうわさで聞いていた程でもなく、私の計画通りあっさり事故死してくれたので助かりました」
和之は、天使の並木に向かって頭を下げながら、
「初めまして、並木さん、よろしく・・・・ん?、なに?、計画?、事故死?、それじゃ、あれは並木さんが仕組んだ事なの?」
「はい、そうですよ」
「嘘でしょう、いや、違うはずだ」
「私はあなたの行動を3ヶ月ほど観察してきました、そして、天使が得意とするささやき作戦や幻覚では、失敗するおそれがあると分析しました、そこで、私は1ヶ月間計画を練って、あなた自身が望んで行なう行動で罠を仕掛ける事にしました、それは成功しかけた前例も参考にしました」
「なんか、難しすぎてよくわかんないや、僕は並木さんの事を好きになりかけているのに、なぜ、僕を交通事故死にしたの?」
天使の並木は、真面目な顔で話しを続けます。
「それは、あなたが10歳で死ぬ予定でしたが今日まで生き延びてきたためです、人の寿命には限りがあり、私達天使は必要な命をいつでも新鮮な状態で、現世に供給しなければいけないからです、あなたにも次の予定があります、あなたの分が足りなくなると、世界中が困るのです」
「僕一人の分でも困るの?」
「そうです、命一つ一つに役割があります、どれか一つが欠けても、世界は成り立たないのです」
「そんなことは無いでしょう、だって命の在庫みたいなのはあるでしょう?」
「順番があって、待たせることはありますが、代わりにする事なんてできません、一つ一つが大切なものなんです」
「納得いかないけど、並木さんがそこまで言うならしかたないや、これから僕はどうすればいいの?」
「私と一緒に、現世で言う『悪魔』に成り下がった天使を見つけて、その天使が奪おうとしているあなたの奥さんとお子さんの命を救う事です」
「お子さん?、僕と千鶴にはまだ子供はいないよ」
「いいえ、あなたの奥さんのお腹にはあなたのお子さんがいますよ」
「え~、それじゃ、僕は父親になったんだ、でも・・・、僕は死んじゃったし・・・」
「どうしたんですか、いつものあなたらしくないですね、へこんでる場合じゃありません!」
「だって、幽霊じゃ千鶴に話すこともできないし、ほら、この部屋の照明だって付けることもできない」
和之は意気消沈し、青白い顔がどんどん暗くなり幽霊らしさをまして行く。
そんな和之に、天使の並木は口からでまかせ、嘘八百、嘘も方便、嘘つきは天使の始まりのノリで和之を励ました。
「岩下さん、幽霊だからこそできる事がいっぱいあるのですよ、今だって空中に漂ってるじゃないですか、それに訓練しだいでは自動車の一つや二つくらい軽々と持ち上げる事ができるし、空だって自由に飛べるし、敵を倒すライダーキック・・・、いささか古すぎますか、今時はなんて言うのかわかりませんが必殺技なんかもできるんですよ」
和之は必殺技のフレーズに反応したようだ。
「僕に必殺技ができるの?」
「はい、訓練すればなんだってできます」
和之の顔は、幽霊らしからぬ、赤みを帯びて、まなこから炎が噴出さんばかりである。
「並木さん、いや、師匠、早速、訓練をやろうよ、僕があみ出した必殺技で、悪者をびしばしやっつけてやる」
天使の並木は、奥さんとお子さんを救うという主旨からはずれているが、元の能天気な和之に戻ったので、これでもいいとした。
「岩下さん、師匠はよしてください、並木でお願いします、それと訓練はこれから行なうとして、まず手始めに、私と病院へ行きましょう」
「どこの病院ですか?」
「緑ヶ丘総合病院です」
「いつもお世話になってるとこだ、結婚するまで毎年一回は外科病棟に入院してたんだよ、そのたんびに、おかぁちゃんにどやされるけど、千鶴がいつも看病に来てくれたから楽しかった」
「毎回、生死の境を彷徨う程の怪我だったはずなのに、楽しかったんですか・・・」
天使の並木はあきれ果てた。
「よく知ってますね、おかぁちゃんがよく言ってた、『お前はそそっかしいからこんな目にあうんだ』って」
「いや、それは違います、今までの怪我はすべて前任者が仕組んだ事です」
「へぇ~、それじゃ、ゴールポストに直撃して脳震盪おこした事も、雪崩に巻き込まれ凍傷になりかけた事も、ダイビングで溺死しかけた事も、屋根から転げ落ちた事も、電車にバックがはさまれてホームの端まで引きずられガードフェンスに股間を直撃したのも、う~ん、あれが一番、痛かった」
「最後だけは違いますが、そうです」
「ゆるせねぇ、そいつに仕返ししてやる、あの股間の痛みだけは我慢ができなかった、絶対そいつにも味あわせてやる」
天使の並木は人の話しを聞かない和之に呆れたが、やる気を起こしてくれたのでそのまま否定せずにいた。
「さぁ、奥さんとお子さんを救いに行きましょう、私の手を握ってください」
「よっしゃ、まかせとけって、そいつの首根っこ押さえて、股間を思いっきり蹴り上げてやる」
和之は天使の並木が差し出した右手を握り締めたが、
「ちょっと、タンマ、男が二人で手を握るのは、すこし気恥ずかしい」
そんなことを言ってる和之にはおかまいなしに、天使の並木は病院へとテレポートした。
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4章 夢の中
4章 夢の中

緑ヶ丘総合病院の正面玄関に、二人は立っている。
玄関入り口にガードマンが立っていたので、和之はあわてて並木と繋いでいた左手を離した。
それから二人で病院内へ向かって歩き出した。
正面玄関から受付ロビーに向かう途中で、風変わりな一団に出会う。
小さな子供が先頭に立って歩き、右手には真っ赤な旗を持ち、その後ろから、青白い顔したご老人達が約20名ほど、その中には一人だけ、結構可愛い顔した20代くらいのお嬢さんがいる。
小さな小学生くらいの子供が並木にきちんと会釈してから、
「はい、皆さん次は東京タワーに行きます」と言った。
まるで、観光旅行の団体客である。
和之はなぜこんな病院に観光旅行客が来るのか、なぜ子供が引率しているのか疑問に思っていた。
「並木さん、その子と知り合いですか?」
「はい、以前に私の部下をしてました、今は下界観光のツアーコンダクターをしてます」
「天使ってそんなこともやるの?」
「はい、天国と言っても何にもありませんからね、多少の娯楽がないと皆さん暇をもてあましてしまいます」
「うーん、地獄にいる人達も下界にくるの?」
「いいえ、地獄にいらっしゃる方たちは、娯楽より瞑想を行なって無の境地を知り、悟りを開いていただきます、そして仏への道を目指される方もいますよ」
「どこが天国で地獄なのか、僕、訳わかんなくなっちゃった」
和之は左手で顔を被いながら、今までの天国と地獄のイメージを思い浮かべている。
「そんなこと、気にしないで3階の産婦人科病棟へ行きましょう」
と並木はエレベータホールへと歩き出した。
「ちょっと、待ってください」
そう言いながら和之は並木のあとを追いかけた。
和之と並木は3階のナースステーションで、千鶴の病室を確認しその病室へと向かう。
病室にはドアを開けずそのままするりとすり抜けて二人は入った。
個室になっていて、千鶴が白いカバーシーツをかぶせられベットの上で横たわっていた。
そのベットの側で椅子に腰掛け心配そうな面持ちで、和之の母である岩下小百合がいた。
和之はすぐさま千鶴が寝ているベットにかけより、
「千鶴、どうしたの、なにがあったの」
と声をかけた。
「和之、あんたこそ大丈夫か、もう歩けるようになったんかい」
小百合は和之に向かって話しかけた。
「おかぁちゃん、僕が見えるんかい」
「あたりまえだろ!、何馬鹿なこと言ってんだい!、お父ちゃんはどうした!、あんたの付き添いをしてたはずなのに、また、あんたをほっぽって、競馬新聞眺めてるんかい!」
小百合はけたたましい声で、はるかかなたのナースステーションまで聞こえるような大声を出した。
「おかぁちゃん、僕さ、死んじゃって、幽霊になったらしいんだよ」
「ただでさえ、ぬけてんのに、事故で頭の脳みそも、どっかに置いてきたんかい、それより、この人誰、お医者の先生様かい?」
小百合は入り口に立っている並木に、ぺこりと頭を下げながら和之に聞いた。
「この人は並木さんです、僕の担当の天使さん、これからお世話になるんだよ」
小百合は、椅子から立ち上がり、並木に向かい、
「和之をお願いします、この子は頭はちょっとばかし足りないですけど、気の優しい子ですから、これからもお願いします」
といって頭を下げた。
並木もそれに合わせて会釈をした。
その時、コンコンと音がしてから病室のドアが開きかけた。
看護師の杉山智子が開きかけたドアの隙間から顔を覗かせ、
「岩下のおばちゃん、ここは病院なんだからもう少し声を落としてよ、ほかの患者さん達に迷惑になるからさあ」
「ごめん、ごめん、和之が、馬鹿なこと言うもんでね、ちょっとばかし、声が大きくなっちまったよ」
「和ちゃん?、和ちゃんはICUでしょう?」
「智子ちゃんもおかしなこと言って、ほら、そこに和之がいるでしょう」
と小百合は和之の方を向きながら、顎をくいっと上げた。
「えー、どこ」
智子は病室内を見わたすが和之の姿は見えない。
「おばちゃんこそおかしなこと言っちゃってどうしたの、和ちゃんなんかいないよ」
「和之は、そこに、いるじゃない」
と今度は指差しながら小百合は言った。
「おばちゃん、和ちゃんが大変なことになって、それに、ちぃちゃんも倒れちゃったんだから、おばちゃんが今はしっかりしないと、おかしなこと言ってないでね、それじゃ私仕事だから、もう大声は出さないでね」
智子はそういいながら、再度病室を見渡してからドアを閉め、ナースステーションへ戻った。
小百合は、狐に化かされたような顔をして智子が閉めた病室のドアを見つめていた。
そして、しばらくったてから、和之の方を向き、
「和之、智子ちゃんまで、目がおかしくなっちゃったよ」
「おかぁちゃん、智子ちゃんの目はおかしくないよ、僕の姿は、おかぁちゃんしか見えてないよ」
「並木さんにだって、この馬鹿息子見えてるじゃないか、馬鹿にするんじゃないよ、ねぇ、そうですよね、並木さん」
「いえいえ、私達、二人の姿は、奥さんだけに見えてるようです」
「あら、並木さんまで」
「おかぁちゃん、さっきも言ったけど、僕は幽霊で、並木さんは天使なの」
小百合は和之がしゃべっていることを無視して、
「並木さん、この子の、頭、元に戻りますか?、やっぱり、事故のせいですか?、これでも父親となる身なんです、このままじゃ、ちぃちゃんが不憫で・・・」
並木は、自分の声を落としながら、
「奥さん、驚かれないようにおねがいします、私は天使で和之さんをお迎えにやってまいりました、いささか止ん事なきことがありまして、天国に連れて行く前に、和之さんに手伝って頂く事があり、こちらにやって参りました」
「はぁー、それで、ほんとに、この子は幽霊なんですか?」
「はい、私も、天使であり、鬼でもあるんです」
と並木は言いながら、自分の姿を、3メートルほどの鬼の姿に変身させ、今にも小百合を頭からかぶりつくように真っ赤な口を開けた。
小百合は、「ぎゃー」と悲鳴をあげて、そのまま後ろに飛びのいたが、後ろの壁にしたたか後頭部をぶつけてしまい、そのまま気を失って、ずるずると体を横たえてしまった。
「あっ、おかぁちゃん、大丈夫かい」
と和之は小百合の元へ駈け寄り、小百合の体を起こそうとするが、すり抜けてしまって思うように出来なかった。
「並木さんも人がわるいなぁ、突然、そんな姿になったら、いくら、おかぁちゃんでも、びっくりしちゃうよ」
和之は振り返りながら言った。並木は元に姿に戻り、
「これならば、信じていただけると思ったのですが、いささかやりすぎましたか」
和之は、小百合のほほを叩きながら、
「おかぁちゃん、おかぁちゃん、おきなよ」
と起こそうとするが、和之の手のひらは小百合のほほにめり込むだけで、効果がなかった。
そんな和之の肩を叩き、並木はこれからの事を説明しはじめる。
「岩下さん、奥様にはすまない事を致しましたが、丁度、邪魔されず静かにお話しができます」
「そうだね、おかぁちゃんがいたら、うるさいからね」
和之は自分の母親が気絶してるのに、あっさりと言った。
「その前に、あなたを付け狙っている天使のことを簡単に説明しておきます、彼なんですが、名前はジャン・クロード・バッタイチだったか・・・、すみません、ラストネームは、はっきり覚えておりません」
「僕は映画が好きだから、その名前は良く知ってる、でも、それって・・・」
和之が疑いのまなざしで見ているので、並木は咳払いをしながら、
「すみません、私もフルネームで名前を覚えていません、しかしジャンだけは確かです」
と素直に認めた。
「そうですか、外人さんなんだね、並木さんには悪いけど、やっぱり、天使は外人さんのほうが似合うよね」
「いいえ、れっきとした日本人です」
「なんだ、それ」
「天使になるとき、自分の名前や姿かたちは自己申告ですので、自由なんです、私の場合は生前のままですが、殆どの者が、憧れた人の名前を選んだり、その容姿に化けます」
「あはは、それじゃ、彼はその映画俳優に憧れていたんだ」
「きっと、そうでしょう、・・・この話しは次にするとして、そのジャンですが、私が推測すると、たぶん、彼は千鶴さんの意識下に潜んでいると思います」
「どうすれば、ジャンを見つけ出すことができるの?」
「千鶴さんの夢の中に入り、ジャンを探しましょう」
「そんな事が出来るんだ」
「はい、岩下さんも、一度、千鶴さんの夢に入ってます」
「えっ、いつ?」
「あなたが、事故に遭われたときです、あなたは、天国の受付に来られず、千鶴さんの夢の中へと吸い込まれていきました」
「あっ、あの公園、あの小さな女の子、思い出した、千鶴だ!」
「そうです、お二人が初めて出会った場所です、あの時に何もなければ、こんな事は起きませんでした、さぁ、千鶴さんの夢の中へ急いで行きましょう」
「でも、おかぁちゃんを、このままにしておけないよ」
「今の叫び声で、あの看護師さんがいらっしゃると思われますから、そのままにしておいて、急ぎましょう」
そして、並木は和之の腕をつかんだ。
その瞬間、二人は淡い光の雲のようになり、ベットで横たわる千鶴の体へ、すーと吸い込まれるように入っていった。
和之と並木が消え去った後、小百合の体から、閃光と共に一人の男が現れた。
「あっぶなー!、あの並木のおっさんがしゃしゃり出てくるとは思わんかったわぁ、天長(仏様)もたいがい今回の事は頭にきてるみたいやなぁ」
その男は、栗毛の短髪に、タンクトップにスウェットパンツを着て、筋骨隆々、格闘技のミドル級クラスの体格はあり、顔立ちもなかなかのハンサムである。
「並木のおっさん、俺の名前をまだおぼえてないんかぃ、なんでバッタイチなんやねん、思わず飛び出てヴァンダムやろってつっこみそうになったやないけ」
とぶつぶつぼやいている。
彼が、並木の言っていた、地獄から逃亡した天使、ジャン・クロード・バッタイチである。
-----------------------------------------------------------------
ジャン:「おい、こら、作者、なめてんか、お前までボケてどないすんねん 」
作者:「すんません、以後気をつけます」
-----------------------------------------------------------------
彼が、地獄から逃亡した天使、ジャン・クロフォードである。
そこへ、病室のドアを威勢よく開けながら、看護師の智子が、
「おばちゃん、何回言えばわかるのよ、ここは、病院だから・・・、おばちゃん、どうしたの!」
と言いかけて、小百合が床に倒れているのを見つけた。
「おっ可愛いねぇちゃんやんか、あんなおばはんより、やっぱこんなねぇちゃんのほうがええわ 」
ジャンは、小百合を抱きかかえ左腕の脈拍を確かめている智子に、まぶしく耀きながら、智子のふくよかな胸の谷間に飛び込んだ。

「岩下さん」
和之は、並木の呼ぶ声で意識を取り戻した。
あたりは暗闇であったが、並木の顔は暗闇の中で青白く耀いている。和之はたとえ方が変だが、あの股間を痛打したとき以上の胸苦しさを感じていた。
並木は和之の体を起こすのを手伝いながら、千鶴のあまりにも深い悲しみを取り除くのは容易な事ではないと考えている。
「並木さん、ここはどこですか?」
「千鶴さんの夢の中です」
「僕が前に来たときの公園では、なんといえない心地よさを感じたけど、ここはとても息苦しくて、とても寒い」
「そうですね、千鶴さんはとても悲しんでいらっしゃいます、このままでは、生きる事を捨てかねません、向こうにある、かすかなともし火だけが、唯一残されているようです」
と並木は暗闇の中に、マッチの火が今にも消えそうな明かりを指差しながら言った。
和之は並木の指差す方を見るが、それが、どこにあるかわからなかった。
「どこですか?、僕には見えません」
「そうですか、岩下さん、私も出来る限りの手助けはしますが、千鶴さんを救えるのはあなただけです、私はここから動けないのです、あのともし火を見つけて、励ましてやって下さい」
和之は並木の言葉にうなずきながら、指差す方へと向かった。
和之は一歩一歩進むが、寒さのため体が震え、まるでアニメのように歯をガチガチ鳴らしながら、明かりを探す。
十歩ほど進んだ先に、かすかな小さな明るい点を見つけた。
和之はそれを両の手のひらで掬い上げるようにつつみ込み、その明かりを覗き込んだ。
その中は、紫色や淡いピンクのパステルで描かれた世界が広がっていた。
和之はレモン水のように、かすかに香り立つレモンの香りをかいで、
「千鶴の匂いがする」
とその明かりに鼻を近づけていくと、和之の体はそのまま吸い込まれていった。
そこは、風や雲にそれぞれ色がついていて、空気も淡いピンクや水色と色とりどりだった。
和之は淡いピンク色の綿菓子のような空気を吸い込み、口から息を吐き出すと、レモンイエローの息になった。
床一面に広がるレモンイエローの空気の絨毯に、千鶴は両手を胸に置き横になっていた。
白い木綿のネグリジェに、10代ぐらいだろうか、幼い顔ですやすやと寝ているようであった。
和之は千鶴の右の首筋に手を入れて、上半身を抱え起こした。
「千鶴、僕だよ、目をさまして」
と千鶴の頬を優しくなでながら唇に軽くキスをする。
千鶴がゆっくりと、瞼をあけて、和之の顔を見た。
そして、千鶴の左腕がしなやかに反りながら、和之の頬に向けて勢いよく振り上げられた。
ばちーん!
和之の体は、後方へ30メートルは飛んだであろう。
和之は顔を歪ませ、空中でスローモーション撮影のように低い地鳴りのような声を出した。
「なー、ぜー、だー、よー」
和之の体はバウンドを繰り返しながら無事着地した。
そのとき、右目から涙が流れ落ち、鼻からひとすじの深紅の血液がたらりと垂れた。
和之は這い蹲り、芋虫のように匍匐前進をしながら涙と鼻血を拭って、千鶴の方へ進む。
千鶴はネグリジェの胸元をぎゅっと掴み、険しい顔で和之の様を凝視している。
和之はやっとのおもいで、千鶴の足元までたどり着いた。
しかし、千鶴は片膝を立てながら、後ずさりをする。
和之が四つんばいでにじり寄り、
「ちづ・・・」
と言いかけたとき、千鶴は、
「きゃー」
と叫び声を上た。
そして、千鶴の右足の踵が和之の顔面へもろに入って、すでに止まっていた鼻血が、またたらりと垂れた。
それから千鶴は、すかさず猪木のアリキックか、はたまたステップキックを連続して繰り出す、やがて和之の顔はみるみる膨れ上がり、15ラウンドをフルに戦った後のボクサーの顔のようになった。
和之は両腕で上半身を支えきれなくなり、顔から床に崩れ落ちた。
そして、膨れ上がった瞼の間から、千鶴を見て、
「あっ、白いパンティーだ」
と言ったとたん、後頭部に踵落しが炸裂した。
和之は意識が朦朧としながら、
「並木さん、僕、もう駄目、死んじゃう」
と呟いた。
すると、和之の頭の中に直接、並木の声が入ってきた。
「岩下さん、幽霊は死にません」
「それでも、もう、僕、意識がなくなってきました」
「岩下さん、それは気のせいです、それよりも、今はどんな状況ですか」
「千鶴が若くなっていて、たぶん、高校1年生くらいのときのようです、だって、胸が殆ど無い、それとすごく凶暴です」
「そうですか・・・、もしかすると・・・、岩下さん、千鶴さんは、現在のあなたの姿を知らないときの夢を、見ているのかもしれません、私があなたを若返らせますので、それで再度チャレンジして下さい」
すると、和之のスーツがスカイブルーのジャージへと変わり、あれだけ膨れ上がっていた顔も、みるみる若返っていき、19歳の和之の顔となった。
和之は体がとても軽くなり、そして勢いよく立ち上がった。
それから、柔軟体操をかるくやり、ボクサーのように軽いフットワークから左ジョブを繰り出し、シャドーボクシングを始めた。
「さあ、こい」
和之は千鶴に向かって、そう叫んだ。
「あっ、岩下先輩」
千鶴は和之を見つめながら、立ち上がり、すぐさま和之の背中へ隠れるように回り込んだ。
そして、可愛い声で、
「岩下先輩、ここに、いやらしい人がいて、私、襲われそうになったの」
と言った。
和之はあたりをきょろきょろと見わたし、誰か他の奴が居たのかという顔をしながら、その場で体をくるりと360度のターンをした。
しかし、誰も見つからない。
「千鶴、誰も居ないよ」
「岩下先輩が追い払ってくれたんだ、嬉しい、それと、千鶴って・・・」
千鶴ははにかみながら、名前で呼ばれた事をとても嬉しそうにしている。
「千鶴は千鶴だろ?、あっそうか、ちぃちゃんだった」
和之はその頃、千鶴を「ちぃちゃん」と皆と同じように愛称で呼んでいた事を思い出した。
千鶴は顔を真っ赤にし、うつむきながら、
「千鶴でいい・・・」
と言った。
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さよなら
「おーい、伊東、顧客別請求一覧のプログラムは単体テスト完了したか?」
俺は返事せず、テスト仕様書を持って課長の席へと向かった。
どうせ、また追加プログラムを俺に当てるのだろうと思い、テスト仕様の詳細を説明しながら今週末までかかると課長に報告をした。
「まあ、お前が言うのだから仕方ないな、これ来週でいいからプログラム仕様書を起こしておいてくれ」
やはり追加プログラムを、来週のスケジュールへ俺のタスクとして、ぶち込みやがった。
俺のキャパからすれば、まだまだいけるのだが、今週末はどうしても沖縄に行かなければならなかった。
俺は久美子と、那覇で会う約束をしていた。
久美子は同じ部署にいたが、去年の7月に、俺に何も話さず退職願を提出し会社を辞めてしまった。
そして、実家のある沖縄に帰った。
久美子とはもう半年も会っていない。
去年の夏、二人で行った茅ヶ崎での夜が最後だった。
久美子からバレンタインデーに、どうしても会いたいと電話があった。
俺は仕事が忙しくて休みが取れない事を告げた。
けれども、一度でいいから私の願いを聞いて沖縄に来てと、とても大事な話しがあるからと懇願された。
俺はしかたなしに了承した。

金曜の夜、会社からそのまま、品川駅のコインロッカーへ向かった。
朝、出勤する前に、バックを預けていた。
そのバックを抱え、山手線とモノレールを乗り継ぎ、羽田空港へ向かった。
週末の東京-沖縄間の最終便はいつも空いていた。
機内最後尾のシートがいつもの場所だった。
俺は空港内の売店で買っておいたビールを取り出し、このシートで久美子と二人でダイビングの話しをしたことを思い出しながら、ビールをあおった。

那覇空港について、タクシーの運転手にホテルへ向かうように告げた。
俺はホテルのフロントから既に久美子が部屋で待っていること聞き、部屋へと向かった。
ドアをノックすると、すぐにドアが開き、久美子が抱きついてキスをした。
俺は持っていたバックを部屋の中央へ投げ、久美子を抱きかかえベットまでキスをしたまま倒れこんだ。
久美子のセーターの裾とブラを押し上げ、乳房を揉んだところで、手に湿り気と乳房がとても硬く張っていることに気がついた。
俺は久美子の体が、俺の知っている体ではないことを知り、そのまま体を起こし、ポケットからタバコとライタを取り出しタバコをくわえ火をつけた。

「私、先月、男の子を産んだの」
俺は、何も言わず、ただタバコをふかしていた。
誰の子であるかは、久美子が言わなくてもわかる。
俺の子だ。
「あなたが結婚してくれない事はわかってる、あなたの子供が欲しかった、それが私の幸せだったの」
俺は何も言わずに、部屋を出て、いつも行っていたカフェバーへ向かった。
深夜にホテルの部屋に戻ったときは、久美子の姿はなかった。
俺はバーボンのボトルを一人で空けたため、したたか酔っていた。
そして、次の日の昼過ぎにフロントからの電話があるまでベットで熟睡していた。
久美子の母親からの電話であった。
深夜に久美子が睡眠導入剤を大量に飲み、今朝、冷たくなった久美子を母親が見つけたと。

俺は、横たわる久美子と生まれたばかりの赤ん坊の遺影の前で跪き、涙を堪え、母親からの話しを聞いていた。
「久美子はあなたの事を何一つ私には話しませんでした、子供の父親があなただと知ったのは、私宛の遺書に、あなたの宿泊先のホテルとあなたの名前があったことでわかりました」
久美子の母親は、久美子からあなたへの遺書だと言って、封筒を俺の前に差し出した。

あなたが気にする事は、なにもありません。
私が死ぬ事を決めたのは、あなたと結婚できないからではありません。
私の大切な赤ちゃんが、私の不注意で死んでしまったからです。
死ぬ前に、一度だけあなたに会いたかった。
さよなら、大好きな、あなた、私は天国であなたの赤ちゃんと幸せに暮らします。
さよなら、あなた
さよなら

昨夜は、久美子が残した、最初で最後のチャンスだった。
堪えていた涙が、とめどなく流れて、便箋をぬらし、久美子が、最後に残してくれた文字を、滲ませてしまった。

----あとがき----

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ふりだし
「もう、やめて!」
智美が悲鳴に近い声で叫んだ。
俺の別れ話は、智美のその声で遮られてしまった。
しかし、俺は二人の関係が既に冷えていると感じている。もちろん、智美もそうであっただろうし、修復できないと、うすうすは感じていたはずだ。
俺は、「さよなら」と一言だけ告げ、智美のマンションを出て行った。

その日の夕方は、2ヵ月ぶりに智美に会い、二人そろってレストランへ出かけ、二人してイタリア料理を黙々と食べて、智美のマンションでも何の会話もなく、テレビドラマを眺めていた。
「もう、わかれよう」と俺から話しを切り出した。
二人の間に、テレビからの軽快なコマーシャルソングが漂っては消えて、タレントの意味のない会話がとてもやかましく感じられた。だが、俺はテレビを消すことにためらった。
なんの音のない静寂が、この場に出来てしまう事を、俺は耐えられなかった。
「誰か好きな人ができたの?」と智美が言った。
「いや、そんなことはない。愛する事に疲れた。お互い愛する事を無理しているようだ。」
その言葉を、智美は遮った。

二日後、智美から会いたいとメールがあり、俺は約束の喫茶店へとむかった。
智美はだいぶ前から、その喫茶店に来ていたようだ。カフェオーレは半分ほど飲みかけて既に冷めてしまっていた。まるで、俺たちの関係に似ているなと俺はふと思った。

「私、あれから考えたの、あなたが言うように、二人とも愛する事に疲れているわ。でもね、私もあなたも、おたがいに、愛して欲しいと言わなかった。いつも、愛してると自分の愛をささやいていたのよ。だから、疲れたの、そう、私、思ったの・・・」
智美の目から涙がこぼれ落ちた。
「そうだな、俺も愛しているかと聞くが、愛して欲しいとは一度も言わなかったな。」
俺は智美のためにと考え、智美も俺のためにと、思い悩んでいた事に気がついた。

「それじゃ、俺を愛してくれるかい! いや、俺を愛して下さい。」
「はい、あなたも、私を愛して」

愛情は与えるだけでは無理があり、愛情をしっかり受け止める事も大切なのだろう。

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