木漏れ陽の中に
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2章 天使登場
2章 天使登場

「お疲れ様、来週も宜しくな」と和之は駅のホームで同僚らと別れ、改札へと向かう。
いつものように和之はエスカレーターを駆け上がる。
エスカレータを降り定期を取り出そうと、背広の内ポケットに手を入れるが、定期入れが見当たらない。体中を手探りしながら改札まで歩くが、定期入れらしいものが見つからない。
改札の前で、再度背広のポケットすべてに手を入れ探すが無い。
鞄の中も探すが見つからない。その時、和之の前に初老の男が立ち、定期入れを差し出した。
「お探しのものは、これではないですか」
和之は目の前に差し出されたチャコールグレーの定期入れに、岩下和之と名前が書かれている定期を確認した。
「どうも、有難う御座います。今、探していたところでした。助かります」
和之はその初老の男性に深々と頭を下げた。
「あなたが、エスカレーターを駆け上がろうとしたときに落ちたようですね」
和之は照れくさそうに、「すみません、階段を見ると駆け上がらないと気がすまない性分でして」
「お若いですね、私からしてみれば羨ましい限りです」
「何かお礼をしたいので、もし宜しければ、僕の行きつけの店がすぐ近くにあるんですけど、いかがですか」
和之は人懐っこい性格で、知合った人を気兼ねなく誘うのである。
「いえいえ、お礼など宜しいですよ、私も先を急ぎます。あなたとはいずれお話しする機会がありますから、その時にでも」
と、初老の男性は改札をそのまま通り過ぎていった。
和之は広げてある鞄の口を閉じながら、あわてて後を追おうとしたが、鞄が自動改札の縁にぶつかり鞄の中身が辺りに飛び出してしまった。
和之は散乱した鞄の中身を、急いで拾い集め改札をでた。
小走りに駅を出ながら辺りをきょろきょろと見回し、奇妙な事を言う人だなと思いながら、初老の男性を探す。
駅前の交差点を歩くあの初老の男性を見つけた。
初老の男性は、すでに交差点の横断歩道を渡りきり反対側の歩道に着いたところであった。
まだ、信号は青の点滅だった。
「急いで渡ればまだ間に合う」
和之は横断歩道を全速力で駆け抜けようとした。
初老の男性は、振り向き和之を見ていた。
和之は大声で、「すみません、ちょっと待ってください」
その時、和之の目に強烈な閃光が飛び込んできた。
初老の男性は、
「彼にはすまない事をしたが、これから償うとしよう」とざわめく人ごみの中から掻き消えていく。

和之は思わず両腕で顔を被っていた。その後は意識が薄れながらも、体が重力に逆らって浮き上がっていくのが感じ取れた。
そして深い眠りから覚めたような感覚と心地よさを感じて、やがて和之は瞼を開ける事が出来た。
和之は見知らぬ場所に立っていた。
「ここはどこだろう」とつぶやきながら自分の周りの景色を確認する。
そこは児童公園の入り口であった。
目の前にちっぽけな砂場があり、右側にジャングルジムとその横に連なって滑り台があった。
左側にはイチョウの木が数本植えてありその奥にブランコがあった。
そこに、幼稚園児くらいの女の子がブランコにちょこんと腰掛て、人形を赤ん坊を抱くように抱え、その人形に向かって何か話しかけていた。
周りには人影は見えない、その女の子だけであった。
「どうして僕はここにいるんだ。目の眩む光を見たときは駅前の交差点にいた筈なのに」
和之はここがどこなのか、どうして自分がここにいるのか不思議でたまらなかったが、女の子になぜか話しかけたい衝動に駆られた。
和之はその女の子の元へ歩き出した。
「お嬢ちゃん、ここはなんていう所かな」
こんな幼い子に聞いたって分かるはず無いのにと思いながらも、和之は聞いてみた。
「ちぃちゃんのおうちのちかくのこうえんだよ」
「やっぱりな、こんな答えしか返ってこないよ」
和之は自分の馬鹿さ加減に呆れながら、この女の子としばらく時間をつぶしていようと考えた。
「しばらくすれば、母親が迎えに来るだろう、その母親に聞けばいいや」
公園を出て道行く人を探せば良いはずなのに、和之はこの公園から離れるのが嫌だった。
和之は女の子に話しかける。
「お名前はちぃちゃんと言うんだ」
「わたし、ちいちゃん、このこ、みなちゃん」
「そうか、そのお人形可愛いね」
「おばあちゃんにいただいたの、いつもちぃちゃんのおそばにいるの」
「そうか、おばあちゃんからの贈りもなんだね」
「いつもおねんねしてるの」
「どうして、おねんねしてるの?」
「いつもおはなししてあげるの」
「おねんねする時にお話してあげるの?」
「ちぃちゃんはママなんだよ」
「そうか、ちぃちゃんはみなちゃんのママでおねんねする前に話してあげるんだね」
「みなちゃん、いまおねんねしてるから、おじちゃん、ちぃちゃんとおにごっこしよう」
和之は時間を忘れて、その女の子と鬼ごっこやら砂場でお城を作ったりと遊んだ。
「ちぃちゃん、おじちゃんのおよめさんになってママになる」
「そうか、それじゃ、ちぃちゃんが大きくなるまで、おじちゃん待ってるね」
「やくそく」と女の子は小さな小指を和之の前に差し出した。
ませた子だと、和之は照れながらも小指を出し指切りをした。
「さて、そろそろお時間なんでなので行きましょうか」
和之は振り返ると、あの初老の男性が立っていた。
「あなたは・・・、なぜ、ここに・・・」
和之は戸惑いながら、記憶をたどる。
しかし、目の前が霞んで、また意識が遠退いていく。

プルル~、プルル~、プルル~。
電話の呼び出し音が鳴っています。夫からの電話でしょう。
私はリビングから玄関先に置いてある電話機のほうへと向かいました。
私は受話器を取り、「はい、岩下でございます」
「こちらは、緑ヶ丘署の橋本と言います」
「・・・はい、岩下ですが、何かあったのでしょうか?」
「岩下和之さんの奥様はいらっしゃいますか」
「私が妻の千鶴ですけど・・・」
「旦那さんが、駅前で交通事故に遭われまして、緑ヶ丘総合病院に搬送されたところです」
「夫の怪我の具合はどうなんでしょうか?」
「私も旦那さんの鞄からご自宅の電話番号を調べおかけした次第で、ご容態は存じておりません」
「どうも、ありがとうございます、これから直ぐに病院へ向かいます」
私は電話を切ってから、すぐに出かける支度をしました。
「あの予言が当たるのかしら・・・、そんな事はないわ、和之さんの怪我は大した事ないわ」
私は自分に言い聞かせるように、不安ながらも夫の怪我はそれほどでも無いと思う事にしました。
私は玄関の戸締りをきちんと確かめて、駐車場への緩やかなスロープを下り、私の軽自動車のドアを開け乗り込みました。
私は軽自動車の中で、和之さんがいつも出張で使う旅行鞄を開けて、和之さんの下着とジャージ、洗面用具一式の入ったポシェット、私の財布の中の健康保険のカードを確かめました。
大丈夫、忘れ物はなさそうです。
それから、すばやくエンジンをかけ、緑ヶ丘総合病院へ向かいました。
病院に着くまでの道のりで信号待ちをしていると、私の大好きな和之さんの笑顔が過ぎりました。
ふと涙があふれ出てきて、頬から一滴流れ落ちました。
「泣いてちゃ駄目、きっと和之さんは元気でいてくれるわ、いつものように『千鶴、ごめん、また怪我しちゃった』と、無邪気な子供のようなあの笑顔で迎えてくれるわ」
私はセカンドバックからハンカチを取り出して、頬から流れ落ちる涙をハンカチで拭き、バックミラーに写る自分の顔を見ながら、無理に笑顔を作りました。
約15分ほどで、病院の駐車場に着きました。
それから、救急病棟の受付窓口に向かいます。
そこには、警察官の方がお二人いらっしゃったので、私の名前を告げて和之さんの居所を聞こうと思いました。
「あの、すみません、わたし、岩下和之の妻の千鶴と申します、先ほど電話をかけて頂いた、緑ヶ丘署の橋本さんでしょうか?」
「いや、私でないが、ちょっと待ってくださいね、おーい、橋本!」
5メートルほど先のほうで、長いすに腰掛て男性と話をしている警察官の方が、こちらに振り向きました。
そして、椅子から立ち上がり私達の方へと歩み寄りました。
私は、頭を下げ会釈しました。
「奥さんですか?」
「はい、主人は今どちらに・・・」
「旦那さんは集中治療室にいます」
私は集中治療室と聞いて涙がこみ上げて来ました。
「夫の容態はそれほど悪いのですか?」
「ここへに搬送されたときは心肺停止の状態だったと、先ほど看護師さんから聞きました」
「集中治療室はどちらですか?」
「この廊下の突き当りです」
私は警察官の方に会釈して、足早に集中治療室に向かいました。
警察官の方と話されていた男性が、長いすから立ち上がり、私に向かって腰を曲げ深々と頭を下げています。
私は、集中治療室の前で待っていると、看護師さんが私に気づきクリップボードを抱えて来られました。
「岩下さんのご家族の方ですか?」
「はい、妻です、夫の容態はどうなんでしょう」
「今、先生が蘇生処置を施しています、私のほうから幾つかお聞きしたい事がありますからよろしいですか」
「はい」
私は看護師さんから和之さんの事をいろいろ聞かれ、それを看護師さんは問診票に記入していました。
すべて書き終えると、看護士さんは、
「先生からお話されると思います、しばらくこちらで待機してください」
「はい、和之さんのご両親に電話したいのですが、こちらでかけてはいけないですね」
「携帯は病院内はすべて禁止してますから、外に出てかけて下さい」
「はい、わかりました」
私は外に出て、岩下家に電話をしました。そして、お母様が電話に出られました。
「千鶴ですが今病院から電話してます、和之さんが・・・」
「また、あのバカ息子、今度はどこかい?、また、階段から転げ落ちて、腕でも折ったかい?、ちぃちゃんにいつも心配ばかりかけて申しわけないねぇ、私からもきつく言っておくからね」
私は言葉につまり返事が出来ません。
「どうしたの、ちぃちゃん」
「・・・」
「どこの病院だい?、お父ちゃんとすぐ行くから、どこだい?、緑ヶ丘病院かい?」
私が返事をしないため、お母様もただ事では無いと気が付かれた様子です。
「・・・はい」
「まってな、お父ちゃんといくから」
「はい、待ってます」
電話の奥からお父様を呼ぶお母様の大きな声が聞こえます。
「お父ちゃん、お父ちゃん、和之が怪我したらしいから、軽トラ、店の前にだしな」
そして、
「ちぃちゃん、店のシャッター下ろしたら、軽トラすっ飛ばしていくからね」
「はい、出来るだけ、早めに来て下さい」
私は携帯を切り、集中治療室へ戻りました。

和之が気が付くと今度は川辺に立っていた。
川の流れは穏やかで対岸は濃霧で視界が悪い。
うしろを振り向くとそこは野原になっているのだが、普通の景色ではなかった。
山も建物もなく平坦で遠くに地平線が見える。
和之は空を見上げると、雲ひとつなく青空というより淡い光に包まれてる感じであった。
「ここはどこだ、夢でも見てるのかなぁ、できればもっと素敵な夢であれば楽しめるのに」
と和之はぼやきながら川辺を下流の方へと歩き出した。
しばらく進むと渡し舟の渡船場らしきものが見えた。
「これまた風流な造りだなぁ、まるで江戸時代からあるような渡船場だよ」
和之は木造の渡船場をじっくり観察した。
「おっ、これはヒバじゃないか、金がかかってるなぁ、どこの自治体が金を出したんだ、こんなへんぴな所に豪勢なものを造って税金の無駄遣いだって、船頭さんに聞いてみようって、ところで船頭さんはどこにいるのだろう、あっそうだ、これは僕の夢だ、自治体なんかあるわけない、そうだ、そうだ、僕の夢だから船頭さん出て来いと念じてみよう」
しかし、和之がいくら念じても船頭なるものは一向に現れなかった。
和之は諦めて川面に目をやると、川の流れにゆらゆらと一艘の舟が漂っていた。
和之は柱にロープではなく縄で括りつけられた舟を引き寄せようと中腰になって力任せに引くがびくともしない。
「こんなに重い舟なんてあるのかよ」
その時「岩下和之さん」と呼ぶ声がした。
「はい!」
和之はびっくりして縄を手放し大声で返事をした後、直立不動になった。
そして恐る恐る振り返ると、そこにあの初老の男性が立っていた。
「あなたでしたか、僕は船頭さんが出てきて怒られると思っちゃったよ」
和之は照れ笑いをしながら初老の男性に話した。それから続けて、
「あなたを追いかけたら、変な場所に移動しちゃったよ、公園でしょう、それとここ、ねぇねぇ、もしかして、あなたは宇宙人?、地球人の僕を拉致しようとしてるとか」
和之は目を輝かせて期待に胸を弾ませ初老の男性からの返事を待っている。
「うっうん、おほん、私は宇宙人じゃありません、天国から来た天使です」
と初老の男性は咳払いをしながら返事をした。
和之は天使だと聞いて腹を抱えながら大笑いをしている。
「おじさん、おじさん、真面目な顔して冗談はよしてくれよ」
「失敬な、冗談を言ってるつもりはありません、私は天使です」
「おいおい、おじさんが仮に天使だとしましょう、それじゃここは天国?、、僕は死んじゃったのかよ」
「はい、あなたは、天国の受付にいます」
「あはは、そんじゃここは三途の川なのか、仏教じゃ懸衣翁か奪衣婆でしょう、天使が船頭なんて、日本と西洋のごちゃ混ぜ、可笑しくて、可笑しくて、死んじゃいそう」
「・・・、ですから、あなたは死んだのです」
初老の男性は笑われながらも毅然とした態度で話し始めた。
「よくある事です、自分が死んだという事実を理解しようとしないため、天国のサービスの一環として死後の世界を生前思い描いたとおりのイメージで再現するようにしてます」
「へぇ~、天国もサービス業みたいなもんなんだ、お客さんに心地よく天国に来ていただくようになのか、そんじゃ、僕が別のことを考えればそれに景色が変わるんだね」
にこっと微笑みながら和之は瞼を閉じて、茅ヶ崎の海岸でグラビアアイドルの女の子達が水着で和之の周りを取り囲んでいる風景を思い浮かべた。
そして瞼を開けると、そこは茅ヶ崎の海岸に変わっていたが女の子達は居なかった。
「おじさん、じゃなかった、天使さん、女の子がいないよ」
「おほん、こちらは死者の方だけです、そんなことを思い描いても景色だけで人物までは出せません」
「なんだつまんねぇ、これじゃあサービス怠慢だろ」
和之はよっぽど期待していたようで、その期待を裏切った天使に毒を吐くのであった。
これまでに和之を担当していた天使たちが、和之のことを「疫病神」とあだ名を付けたのがわかると天使は思った。
天使は和之が瞼を閉じてまた何かを思い浮かべている様子なので心の中をのぞいてみた。
天使は和之の心に描いてるイメージを見て、
「厄介な人だ、そんなことは無理でしょう」
と和之へのサービスは取りやめて事務手続きに最適な事務所の風景に切り替えた。
和之は鼻の下をのばしながら、片目だけを開けた。
「あれ、僕はこんなの思い浮かべてないよ、ここは僕の会社の事務所じゃないですかぁ~」
和之がいろいろ喚いてるのを無視して天使はこれまでの経緯を話し始めようと、
「これから今までのことをお話しますので席について下さい」と言った。
和之はしぶしぶ自分の机の椅子に腰掛けた。
「あなたは10歳で亡くなる運命だった、しかし、こちらの事務手続きのミスと、あなたの突飛な行動で生き永らえてしまいました」
和之はきょとんとした顔で聞いている。
「それから、あなたの生命力はゴキブリ並、いや失礼、並々ならぬもので、そのおかげであなたを担当した天使たちはすべて左遷されております」
「ゴキブリ並ってのは何だよ、天使の癖に礼儀ってのしらねぇなぁ」
「こちらでは皆、あなたのことを疫病神、いや失礼、トラブルメーカーとお呼びしてます」
「なんか聞いてるといけすかねぇ~」
和之はさっきのサービスの中止と自分のことを天使たちが快く思っていなかったことで不愉快であった。
しかし、和之は気転が早いと言うか、物事にこだわらない性格のため次のことを考え始めた。
「ふ~ん、左遷か、ねぇ、ねぇ、左遷ってどこに飛ばされるの?」
「どこって、決まってるじゃありませんか、地獄ですよ地獄、ここは天国と地獄しかありません」
「やっぱり、地獄なんだ、天使さん、次は地獄に連れて行ってよ、けっこう楽しめるかも」
にたりとしながら和之は天使に地獄行きをせがんだ。
「あの、観光旅行ではありませんが・・・」
「だって、血の池地獄も見たいし、地獄の鬼も見たいし、迷惑かけた天使たちに一言お詫びもしたいしさぁ、いいでしょう、連れて行って、お願いしますよ」
天使は自分から地獄行きを望んだ死者を初めてまのあたりにしたので、少々戸惑い気味である。
「無理です、地獄は現世の話に出てくるようなところじゃないんです、汚れた魂を浄化するところですから、死者の皆さんが穏やかに過ごして頂くところです、それに鬼もいません、天使がいるんです」
「あれ、いいところなら、それじゃ、左遷じゃないでしょう」
「いえいえ、左遷は左遷です、仕事の量は膨大です、話を早くすると天使のほうが、地獄に行くと地獄の苦しみを味わいます、なぜかと言いますと、自己中心的な人や、ものすごく性格の悪い死者達が集まっているんです、その死者の方たちのお世話をしたり、慰めたり、浄化するにはどうすればいいかなんて悩みを聞いてあげたり、大変なんです」
「ほう、やっぱり、地獄の方がよさそうだね」
天使は拙いことを言ってしまったと後悔しはじめていた。そして、どうしてこの人のペースになってしまうのだろうと反省しながら、天国行きの話しを進めようとしている。
「地獄もいいですけど、まず、天国を先に見学されてから地獄を見学するというのはどうでしょう」
天使は一度天国に連れて行きさえすれば後はなんとかなると考え、この場を打開する為に嘘をついた。
「おっ、その話しのった!」
和之は天国も地獄も両方見れると得した気分で了承した。
その言葉を待っていたかのように、天使は和之の前に承諾書を差し出しながら、
「この承諾書に名前を記入して下さい」
和之は差し出された承諾書を受け取る。

***********************
             承諾書
天長殿

名前      は天国において天長殿のあらゆる
ご指示に従う事をお約束いたします
***********************

和之はその承諾書を一瞥し、
「ねぇ、ここに書かれてる『天長殿』って誰の事ですか?」
「現世ではその方は仏様と呼ばれてます、天国で一番偉い方で、会社で言えば社長にあたります」
「へぇ~、そんじゃ、地獄の偉い人は?」
「閻長です、もちろん閻魔様のことです」
「おもしれぇ~、「てんちょう」さんに「えんちょう」さんなの、冗談でしょう」
和之は腹を抱えて笑い出した。
天使もやっぱり笑ったと思いながらも、
「冗談じゃないのです、ここなら笑っても許されますが、ご本人の前では決して笑わないで下さいね」
と天使も笑いを堪えながらそう言った。
まだ笑い続けている和之に、天使はどこからとも無くペンを取り出し和之に手渡した。
「名前のあとの空欄に、岩下和之とご署名をお願いします」
「あはは、あっは、はい、ここですね」
和之が承諾書に名前を書いていると、ズンズンズンズン、ズンズンズンズン、ピンポン、パポンとメロディーが流れ出した。
天使が椅子にかけてあったコートから携帯電話を取り出して、声をおさえ誰かとやり取りをしている。
和之は聞いたこと無いメロディーなのでそのメロディーに興味がわき、名前を「岩下和」まで書いてペンを置いた。
和之はその着メロを教えてもらってから名前の続きを書こうと考えていた。
天使の電話の相手は天長(仏様)であった。
天使の顔が徐々に青ざめていき、そして誰もいない壁に向かってお辞儀をし携帯電話を切った。
「岩下和之さん、大変なことになりました、急いで下界に戻って下さい」
「でも、まだ、名前、書いて無いよ」
「そんなことはどうでもいいです、まず、あなたが事故に遭った場所に戻しますから、奥さんに至急会って下さい、私もあとから追いかけます」
「わかったけど、その着メロをおしえ・・・・」
和之はまた意識が遠退いていった。
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